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17章(5)
「始めます」
緊張感が漂う室内で、草壁の一言でプロファイリングが再開された。
カニューラから流れてくる香りは少しずつ変わっているようで、なにか胸がさわさわするような、気持ちが毛羽立つ感じが続く。おそらくそのような反応を詳しく調べているのだろうけど、精神的にはざわついて、長時間受けるとなるとしんどい検査だ。
口で浅く呼吸をしているが、気を張っていることもあり、しばらくすると疲れてくる。何もせずに香りを嗅ぎ続けるだけ、といっても、喉は異様に渇くし、記憶や思いといったいろいろが脳裏をよぎって疲れる。
思わず目を瞑る。
「大丈夫? 疲れた?」
気がつけばベッドサイドに颯真がいた。尚紀は無言で首を横に振った。
「無理することないよ?」
尚紀は強がった。
「大丈夫です」
すごく疲れるし嫌だけど、それでも進まねばゴールは見えない。
「うん、そうか。しんどかったら手を挙げて教えてね。休憩を取るから」
颯真の優しい言葉に尚紀も頷いた。
プロファイリングは続く。
辛いと尚紀が訴えれば颯真が休憩をとってくれるだろうが、レムナント香が見つかるまでこの検査は終わらない。
多忙であろう草壁や颯真をずっと自分が拘束するのは申し訳ないし、すでに始めて何日も経っているのでという焦りもある。
なにより、この検査を何日もやりたくない。一度すべて外して落ち着いたら、もう耐えられない気がするのだ。
この検査を受けていると、頭が朦朧としてくるが、早くこの検査を終わらせたいと、尚紀は何度も気を引き締める。
物々しく検査が再開されて、数時間が経つ。
「結構お疲れですよね。でも、確実に近づいているので、頑張ってくださいね」
草壁の励ましに、尚紀も頷いた。
見つけなければ終わらない。
その時、尚紀の身体はビクンとわずかに動いた。
ボタンを押す。
なにこれ。
「西さん」
「尚紀」
草壁と颯真がベッドに寄ってきた。
「尚紀?」
颯真に呼びかけられて、尚紀は顔を上げた。二人と視線がかち合い、尚紀は目を閉じた。
その香りには明確に覚えがあった。というか、思い出した。これまで記憶に遠かったけど、これだ。これが番の香りだ。
「夏木……」
レムナント香を探り当てたと尚紀はとっさに思ったが、ゴールではなかった。そんな簡単な話ではなかった。
そこから草壁に一気に詰めましょうと草壁にテンション高く言われて、さらに細かい探索がしばらく行われたのだ。先ほど以上にぞわぞわとする感覚が続く。
流れてくる香りは、少しずつ配合が変えられているようで、その中から身体が最も反応する香りを探っているらしい。
尚紀にとってはずっと夏木の香りに触れている感じがして、とにかくしんどい。
さっき、見つけた気になり、気持ちが落ち着いてしまった。だから、この状況に気持ちが追いつかないのかもしれない。
「は……あ……」
口を開くと、熱い吐息が漏れる。
番の香りにずっと晒されている感じがするのだ。尚紀の身体は煽られ、大きく変化していた。今は番の香りだけで陥落しようとしている。
身体中から汗が吹き出て、自分の香りも感じる。尚紀が一番変化を感じていたのは下半身で、がちがちでぐずぐずになっているのが、確認せずともわかった。
発情期でもないし、自分は決して夏木の香りを求めているわけではないと思っているのに、その香りに触れて身体は簡単に反応する。
あの頃の香り……。
番の香りには煽られるけど、自分が欲しいのは違うのに。
本当に身体は裏切るらしい。あれだけ、颯真と一緒に頑張って整えたフェロモンが、あっけなく崩れていく危うさを感じる。
尚紀は身体が最も反応する配合を特定するために、それにじっと耐えるしかなかった。
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