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17章(9)

「西さんのレムナント香は先日特定することができました。本日はそのもうワンステップ先の検査です。新しく番になる方の香りを嗅いでいただいて、その反応を記録していきますね」 「新しい番……」  反芻する尚紀に、草壁は「『ペア結合反応評価』という検査です」と説明した。それによると、あらかじめ病院側では、尚紀の番候補として江上廉のフェロモンを本人の同意の元に採取しており、解析済みだという。  これを被験者である尚紀が嗅ぐことで、現状どのような反応を見せるのか記録しておくとのこと。 「今回はリラックスして受けてください。西さんにとっては馴染みのある香りでしょうから、大丈夫です」  そう言われて少し安堵した。  というか、廉の香りに触れる試験……。それは少しワクワクする。この前の検査に比べて気持ちが軽い。  廉と別れてもう十日以上が経つ。  彼と気持ちを繋げて、こんなに離れたことはなかった。日々自分の体調に振り回されているが、それでも寂しいと思ってしまう。  それに尚紀自身が不穏な思考回路に嵌ってしまっているような感じもあって、それを振り払いたい。きっと廉の香りに触れれば、揺らぎそうな不安など取り払えるに違いないのだ。 「番候補の方の香りを『ペア・ボンド香』というのですが、ペア・ボンド療法の事前治療とは、西さんの身体を、フェロモン抑制剤でこれまで以上にフェロモンをコントロールして押さえつけることで、レムナント香による身体の反応を抑え、逆にペア・ボンド香の反応を引き出しやすく整えていくものなんです。これはペア・ボンド療法の成功率を上げるために必要な過程ですね」  颯真にも先日そのように説明されたので尚紀は頷いた。  今は、レムナント香への反応を抑えて、フェロモンを抑えることで、廉の香りに反応しやすくすると。そのためレムナント香に対する生体反応の記録が必要で、あのようなしんどい経験をしたのだと説明を受けた。  今後は投薬治療でフェロモンを徹底的に抑えていくので、何度か確認の検査を行うが、今が一番強い反応で、少しずつ軽くなっていくという。  最終的にペア・ボンド療法を実施する数日前に確認の評価試験を行い、そこでゴーサインが出れば予定通りにペア・ボンド療法の試験が行われるとのこと。  一つ一つ確認しながら治療が進んでいくのだと尚紀は理解した。  先日のベッドに横たわり、先日のように身体中に管をつけられる。カニューラも取り付けられた。お尻も探られてモニターを入れられた。レムナント香とペア・ボンド香の評価項目を揃える狙いがあるという。  横向きに体勢を整えると、草壁が尚紀の顔を覗き込む。 「いいですか、これから江上廉さんの香りを流すので、しばらくじっとしていてくださいね」  気分が悪くなったりしたら、すぐに仰ってくださいね、と言われた。やっぱり前回でかなり心配をさせてしまったらしい。  尚紀は頷くと目を閉じた。

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