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18章(7)
「体調はどうなの」
潤の問いかけに一瞬迷ったが「安定しています」と尚紀は答えた。いろいろあるけど、言葉にするのであれば「自分は大丈夫である」と。そう思いたい気持ちがあると同時に、潤にも心配をかけたくないという本音もある。
入院していて、元気を装うのもどうかとは思うのだが、わざわざ来てもらっているのに不調な自分を見せて気遣われるのは申し訳ない。
彼は、モデルという職業をしていることを特に気にしてくれているらしい。親身になってもらえて、嬉しいのだけど。わずかに後ろめたい気持ちも湧いてくる。
今回の入院は体調不良のためではなく、潤にはまだ告げることができないペア・ボンド療法の事前治療のためだ。はっきり目的を話せないから、言葉に躊躇いが出る。
「周期に影響されるんです。やっぱり発情期が近くなると不安定になって……」
尚紀は少し言葉を濁すが、潤は表情を曇らせた。
モデルの仕事は休んでいることも、そこまでいうべきかなと迷ったり、込み入ったことを話すと廉の話に及んでしまいそうだったりして、その場しのぎの言葉に罪悪感が少しずつ募る。
潤はオメガの体調が周期に左右されることを、ずいぶん心配してくれていた。
凛々しくて、格好良くて、とても優しい人。
まさかこのような巡り合わせになるとは……と尚紀自身も思う。昔の、記憶に残る高校時代を思い返す。
目の前に潤がいて、颯真に気遣ってもらって、廉という優しい番候補がいる。どんな巡り合わせでここまでたどり着いたのか。不思議な気分になる。
潤がここまで体調を気遣ってくれるのは、きっと同じオメガだからだろう。おそらく彼にも同じような経験があるのかもしれない。尊敬の気持ちに、親近感も混じる。
潤はまっすぐに尚紀を見つめてくる。その視線が憂いを帯びていて、尚紀はドキッとした。
いきなり潤が尚紀の手を握った。心臓が跳ねるほどに驚いたが、その手は柔らかくて温かくて。彼の気遣う心が伝わってくる。
温かい癒しの手だ。
尚紀は、本当に彼は颯真の双子の弟なのだということを実感した。似ていないのに、空気がすごく似ている。
「潤先輩は優しいですね……。颯真先生とそっくり」
しかし、尚紀の言葉に、潤が驚いた声を上げる。
「そっくり?」
そんなにびっくりすることだろうか。尚紀としては昼間の颯真の手と比べただけなのだけど……。
尚紀はこれまで颯真の手に助けられ、その暖かみに癒されてきた。颯真先生を信用しているからこそ。
「颯真先生は本当にいい先生です。自分でもうんざりするほどに不安定なのに、きちんと向き合ってくれます。投げ出さずに診てくれて、ちゃんと楽にしてくれる。颯真先生が来てくれたら大丈夫って思える」
手の温かみを通して、二人は双子なのだと、尚紀は強く実感する。
「僕は颯真先生の温かい手が好きです。潤先輩も同じように温かい……双子なんだなって思います」
言葉にするのは難しいことだけど、尚紀は颯真への信頼と潤への好意をそう言葉にした。
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