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第16話 恋人になった

「雪ちゃん……可愛い……天国はここからやで」    柳はさらにずぶずぶとピストンを繰り返す。   「えっあっ……ああっ……ダメっ……」 「続けてイきや。何回でも」 「う……嘘っ……あああっ……ひあっ……」 「ここがええんやろ?後ろでイってみ」    柳が突き上げるように内壁をえぐり続けると、雪本はまたびくびくと身体を震わせてトロリ、と少量の精液を溢れさせた。   「やっ……柳さんっ!もうっ……かんべんして……ああんっ」 「アカン……もっと俺を欲しくなるように、しっかり覚えとき」 「いやああっ……また……またイクっ……ヘンになるっ!」 「気持ちよさそうやんか。中がヒクヒクしてて、俺も気持ちええわ……」    柳は腰をぐりぐり回転させながら、雪本の両方の乳首を指で弄ぶ。   「イクっイクっ……も……お願いっ……柳さんもイって……」 「しゃあないなあ……もっと天国いかせたりたいのに」    柳はようやく本気で自分もイこうと腰を打ちつける。  雪本はもうただ乱れて喘いで、放心状態で柳にしがみついている。   「雪ちゃんのココ、最高や。もう1回イき」 「やっあっあああん」    柳に前を激しく扱かれながら突き上げられて、雪本は何度目かの絶頂を迎えた。  少し遅れて柳も思い切り雪本の中に欲望を存分に放った。  息も絶え絶えの雪本の呼吸を邪魔しないように、細かいキスを落とす。   「なにも最初からこんなにしなくても……」    雪本の恨み事に柳は笑う。   「最初が肝心やんか。もう怖くないやろ?」 「うん……怖くはないけど……」    別の意味で恐ろしい、と雪本は思う。  まさか後ろの穴につっこまれることが、こんなに快感だなんて、知らない方がよかったような気がする。  柳がそっと雪本の下腹部をなでると、さっきまで突き上げられていたあたりがじわりと熱くなり、痺れるような余韻に雪本は浸る。   「雪ちゃん、俺の恋人になってくれるやんなあ?」 「今さら聞くんですか……」 「ちゃんと返事してぇな」    すねたように柳にねだられて、雪本は柳の身体を抱きしめる。   「また……天国いかせて下さいね」 「まかしとき。なんなら今からでも」 「いや……今日はもう無理……」  翌週月曜日、雪本は重い身体をひきずってへっぴり腰で出社した。  男の恋人がいるということはこんなにも体力を消耗するなんて知らなかった。    あれから結局土日は柳のところに軟禁状態で、セックスしまくったのだ。  天国の後には地獄が待っていると雪本は身を持って学習した。  普段は意識したことのない尻の穴がうずくように存在を自己主張している。  爽やかに軽い足取りで出勤してきた柳を見ると、なんだか悔しい。   「ねっねっ……あれからどうなったのさ」    昼休み、佐野は雪本につきまといながら好奇心に目を輝かせている。   「どうって……佐野ちゃん……」    人を騙したことは欠片も悪いとは思っていないらしい。  もっとも、佐野のおかげでふっきれた、ということは事実なのだが。   「柳さんどうだった?ヤったんでしょ?」 「見たらわかるでしょ」    雪本がため息をついて腰をさすると、佐野はニヤニヤと笑いを浮かべる。   「ああ、いいなあ。僕も柳さんにだったら抱かれてみたいっ」 「ダメ。もう佐野ちゃんにはあげない」 「ケチ、妄想するぐらいいいやんか。あっ柳さーん!」 「佐野ちゃん、先週はずいぶん世話になったな」    嫌みのように柳は佐野の頭をポカリと小突く。   「だって、柳さんヘタレなんやもん。僕に感謝してよっ」 「はいはい、感謝してますよ」 「あーあ。つまんないなあ。雪ちゃんいじめてる時は楽しかったのに」    柳にまとわりついてはしゃいでいる佐野はいつも元気そうだ。  佐野だって男の恋人がいるのになんでこんなにいつも元気なんだろう。   「佐野ちゃんて、いつも元気だなあ……」 「僕の恋人は肉食獣じゃないからねっ」 「肉食獣って俺のことか?」 「他に誰がいるのさ、雪ちゃん食い尽くしたくせに」    肉食獣ね……確かに。  柳の熱烈なキスは好きだけど、ゲイの場合恋人は草食で、できればサイズは小さめの方がいいよな……と雪本はため息をついた。 (本編 ~Fin.)

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