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第3話 「うん、よくできました」☆
こうしてノアに案内された部屋は豪華ホテルのスイートルームのような広さだった。省吾はスイートルームなんて泊まったことはないが、映画で見たスイートルームがこんな感じだったのだ。
キングサイズのベッドが居室の中央に配置され、周囲にテーブルやら椅子、ソファが取り付けられている。
「わぁ〜、素敵な部屋。ヒジリ様の部屋ってこんないい部屋をもらえるんだねぇ」
ノアの後ろには数名の執事やメイドのような服の人間が3人控えていた。省吾の視線に気が付いたノアは彼らを手で示す。
「この人たちはヒジリ様専属のメイドと執事だよぉ。何か困ったことがあったらなんでも言ってねぇ〜。それ以外にも悩みとかあったらちょっとしたことでもいいから話してねぇ」
ぺこり、と彼らが頭を下げる。
女性二人に男性一人。全員省吾の親と同じくらいの年齢に見えた。
「省吾でいいよ。俺もノアって呼んでいい?」
尋ねると、ノアは目を丸くした。けれどすぐに人好きのする笑顔を浮かべる。
「いいよぉ。これからよろしくねぇ」
言ってノアは手を差し出してくる。握手かと思い手を握り返すと当たりだったのだろう、彼は嬉しそうに目を輝かせた。
「異世界の人って手をつなぐことで親愛を示すって本当だったんだねぇ。俺、この職につくためにたくさん異世界の慣習を勉強したんだよぉ」
「へぇ……、異世界って、毎回俺みたいな……、髪が黒くて目も黒か茶色の人が来るのか?」
「うん。こっちの人種とは少し違って面白いよねぇ」
ということは、歴代のヒジリ様とやらはアジア圏から来ているのだろうか。蓮は確かクォーターと言っていたからミロと顔が似ているのだろうか?
そこのところは考えたら何時間でも使ってしまいそうなので省吾は今はやめておくことにした。
「それで、俺、本当に今日することになんの?」
省吾は熱くなる頬を無視できず、そっぽを向いた。うん、とあっさりとしたノアの返事が聞こえた。
「楽しめるといいねぇ」
「う……、ん……、まぁ、おぅ」
どうやら省吾とノアではセックスに関する感覚が違うようだ。あくまでこちらの人間からするとセックスは楽しいものなのだろう。
そんな彼を見てどう思ったのか、ノアは繋いだ省吾の手をぶんぶんと振りながら続けた。
「大丈夫だよぉ~。ミロはこういうのに慣れているし。なんたって彼は13歳の時には経験してたもん」
「え!? あ、そうなの?!」
「うん。近所のお姉さんにペロリと食べられちゃったの。で、そのお姉さんは街でも大人気のセックスワーカーで、ミロもそのお姉さんにきっちり仕込まれたらしいし、省吾に恥をかかせるようなことはしないと思うよぉ」
そうなのか。
省吾はずっしりと心が重くなる。内心でその女と比べられたらへこむな、と思ったが、それでも蓮にそっくりな顔を持った男に抱かれる事を望んでしまう。
「……詳しいんだな」
「うん、俺と彼は幼馴染だから」
言いながらノアは歩き出す。部屋の脇のほうに備え付けられた扉を開く。
「ここがお風呂。上下水道はしっかり完備してあるから、遠慮なく使ってねぇ」
それを見て、今度こそ省吾の顔は真っ赤に染まった。
蓮に恋してからというもの、自分で男とする方法を調べ、彼に抱かれることを考えて何度後ろの穴をいじったかわからない。
力なく頷く。ノアは省吾の顔つきに気がついていないのか、過去のヒジリの一人が水道について教えてくれたおかげで設備が整っているのだと楽しそうに語っていた。
そうして一通り説明を終えるとノアは部屋を出て行ったのだった。
食事をもらい、風呂に入る。ノアの言葉通り蛇口をひねればお湯が出て、シャワーまでついていた。備え付けられていた石鹸と手ぬぐいのような綿の布で体を洗う。
夜になり、省吾の緊張は極限にまで達した。メイドも執事もいなくなり、たった一人でベッドの上に正座しミロの訪れを待つ。
逃げようと考えなかったわけではないが、連の顔と似ている男とヤれるかもしれないということと、逃げても行き先がないということで結局こうして緊張とともに待つしかできなかったのだった。
コンコン、とノックの音が響く。
「はいっ!」
思ったよりも大きな声が出た。扉を開けると、鎧を脱ぎ、正装らしき服に身を包んだミロの姿があった。
「この度はご指名いただきありがとうございました」
言いながら彼は跪き胸に手を当て、目をつむる。よく映画などで見る中世の騎士が王の前で跪くポーズだった。
「あ、いや、そんなかしこまんなって!」
慌てて省吾は近寄り屈む。ミロの顔が省吾のほうを向き、至近距離で見つめあった。
見れば見るほど連に似ている。
心臓がどくどくと脈打っていく。別物だとわかっているのに連と似ている彼にときめいてしまう。それはこの非日常が招いている混乱かもしれないし、これから彼とセックスするという期待からくるものかもしれないけれど。
「俺の顔、好みなんですか?」
省吾の表情から察したのだろう、ミロが尋ねる。省吾はこくりと頷いた。
「うん……。前の世界で好きだった奴にそっくりなんだ」
「なるほど」
納得したような表情でミロは立ち上がる。身長も蓮と同じくらいで省吾と目線があった。
「そいつはどんな感じで話していたんですか? 俺もそいつみたいにふるまったほうがいいですか?」
瞳に嘲りが見えたような気がした。そういうところまで蓮に似ているよな、と泣きそうな気持ちになった。
彼は優しかったが、嘘はつけない性格で、たまに省吾が何かミスをした時にこういう目で見てきた。その視線を向けられる事が怖くて蓮の近くにいた時は気を張り続けていたな、と思い出す。
「とりあえず、その敬語はやめてくれるか? なんか、気持ち悪いし、彼は俺に敬語を使った事なんてなかったし……」
はは、とミロが笑う。
「そりゃ悪かった。俺も敬語を使い慣れてないから助かる」
そんな感じで話すのか。省吾は口角をあげる。等身大の彼が見れた気がして嬉しかった。
「そうそう、そんな感じ。あと、変に演じなくていい。なんか、そうされると逆に萎えるというか……。正直、お前の演技あんまうまそうじゃないし」
言うと、ミロは一瞬目を丸くしてから困ったような微笑を浮かべた。
「そうだな。正直腹芸が苦手だから騎士をしているようなところはあるし」
ミロの言葉に省吾は面白くなって尋ねる。話してみたら案外面白い人物なのかもしれない。
「へぇ、やっぱこっちの世界でも腹芸が上手くなきゃ出世できねーのか?」
「まぁな。実力とコネと腹芸が全て。俺は実力しかなかったから騎士にしかなれなかったんだよ」
ぷは、と省吾は噴き出した。冗談だったようでミロも片方の眉をあげる。新しい表情が出れば出るほど蓮に似ていると思ってしまった。更には声帯もそっくりで、蓮と話している気分になってた。
「……えっと、じゃあ、とりあえず、するか?」
視線を泳がせて省吾は尋ねる。
ミロもベッドのほうを見て気まずそうにすると頷いた。
省吾を先にベッドに乗せ、ミロが覆いかぶさってくる。
「先に聞きたいんだけど、してほしくない事はあるか? 前からはダメとか、キスは嫌とか」
押し倒される形になり、省吾は心臓の脈動が強くなっていくのを感じていた。
「いや別に……、特にない。逆にお前はあんのか? キスはダメとか……」
「俺もない。じゃ、とりあえずキスしてもいいか?」
問われ、省吾は子供の様に両目をぎゅっとつむると頷いた。ふふ、とミロが笑う気配がする。
ちゅ、と唇に柔らかい感触がする。すぐにそれはぬるりと省吾の唇を舐めてきた。
「口、開けて」
至近距離でささやかれ、省吾はおずおずと口を開ける。中にミロの舌が入ってきた。
舌を探り当てられ、くちゅくちゅと絡められる。舌を探るように舐められ、上あごのあたりにも舌が接触する。
「っ……、ふっ……」
頭がぼーっとしてくる。ノアが言っていた事は本当だった。彼は本当に慣れているのだろう。とはいえ、省吾はこれが初めてのキスだから誰かと比べることは出来ないけれど。
「アンタも舌動かしてくれる?」
口を離され囁かれ、再び口づけられる。柔らかさが心地いい。言われたとおりに省吾は舌を使う。ミロの舌を舐め、注がれた唾液を飲む。
「うん、よくできました」
口を離すと二人の間を唾液の糸が伝う。まるで子供に接するような態度にむっとしたが、相手からすると初心な省吾は子供みたいなものなのだろう。
「一応確認するが、俺が入れる側でいいんだよな?」
コクリとうなずく。
反応が想定通りだったのだろう、ミロはニィっと口角をあげた。
筋張った手が省吾の頭を撫でる。
「了解。気持ちよくしてやるな」
片手で頭を撫でられ、もう片方の手で首筋を触られる。
甘い言葉も、甘い仕草も、全て連と似た顔でされるものだから頭が沸騰しそうなほどに興奮してしまう。
「ヒジリ……、あ~、省吾様は初めてか?」
ミロの言葉に、緊張がほどけたような気がした。
「様ってつけんなよ。省吾でいい。俺もアンタのことミロって呼んでいいか?」
「ああ、そういう感じでいいんだな。じゃあ、省吾は初めてか?」
「あー、うん、まぁ」
きまり悪くて視線を逸らす。
「ずっと、俺に似た顔の奴に操立ててたのか?」
「操って……、付き合ってもなかったし、ずっと勉強や部活で忙しかったんだよ!」
「ふぅん、そんなもんなんだ」
ミロは着ていた服を脱ぎ始める。
「省吾も脱げよ」
騎士というだけあって鍛えられた体をしていた。自分もこれまでサッカーをやってきていたのだから体つきに自信はあったが、ミロほど全身鍛えられてはいなかった。
「……ん」
省吾も纏っていた簡易的なローブを脱ぐ。裸で向き合うとこれからすることがより一層現実味を帯びてきた。
「お前、男も経験あんのかよ」
「ない。だから、痛かったらすぐに言えよ」
ミロはまず省吾の鎖骨を舐めてきた。黒い髪が自分の肌の上を撫でるのを嬉しく思ってしまう。蓮よりは少しだけ長めの髪だが、髪型も同じにしたらきっと瓜二つになるのだろうな、と思うと心臓が糸で締め付けられたような気がした。
そんな自分の気持ちを見て見ぬふりをして恐る恐るミロの首に触れる。彼は振りほどかずにそのまま顔を滑らせ省吾の乳首に緩く甘噛みした。
「俺も、ここに来る前に男同士でしたことのある先輩に話を聞いてきたんだよ。で、ココ」
ミロは省吾のほうを向いて乳首の先を指でつつく。
「男でも乳首で感じるんだってな」
言いながらミロは人差し指と親指で両方の乳首をつまむ。
「んっ……」
刺激に体を強張らせた。
「ふ~ん、アンタ、素質ありそうだね」
ミロは牛を搾乳するように指を動かし刺激してくる。
「素質あるっていうか……、開発されてる?」
「……っ!」
びくびくと跳ねる省吾の反応を見てミロは首をかしげた。
そうなのだ。
蓮を思って後ろを開発している間に興味本位から乳首のほうにも触ってしまい、気持ちよさに目覚めてしまっている。恥ずかしい。絶対に言いたくない。口をつぐんでいると、ミロが顔を近づけてきた。
「やらしいな。ここ、自分でいじってたの? 初めてだって言ってたよな?」
涙目になってミロを見返す。
こいつちょっとS入ってるだろ。思うが口には出せない。口を開いたら変なことを口走ってしまいそうだった。
「なぁ、教えろよ。ここ、弄るの好きなのか? どんなふうに自分でしてんの?」
「ぁっ……! ふっ……」
ぎゅう、と引っ張られてちかちかと脳内で星が弾けたような気がした。
「ぁ……、そこ、指の先で弾くの、好き」
言うと同時に顔が赤くなる。羞恥でいたたまれない。ミロの機嫌はよくなったようだった。
「こんな感じ?」
ピン、とミロは両手で乳首をはじく。
「んんっぅっ」
省吾の体が震える。
「ははっ。かわいっ」
言いながら何度もつまんだり押したり弾いたりしてくる。そのたびに快楽の電流が体の中を駆け巡る。恥ずかしいのにもっとしてほしい。
ふと太もものあたりに何かがあたる感触がした。
もぞり。足で確かめると、ミロの股間が硬くなっていた。
「……お前だって、興奮してんじゃねぇか」
言いながら、省吾は安心していた。萎えられたらどうしよう、と思っていたのだった。
「そうだな。省吾がかわいいから」
嬉しがらせの言葉まで出せるのか。
本心かどうかはわからないが、それでも愚かにも省吾の心は喜んでしまう。
ずくりと下腹がうずいたような気がした。
「じゃあ……、それ、早く俺の中に入れろよ」
「え~、もうおっぱいはいいの?」
くすくすとミロが笑う。
「おっぱいって言うな!」
ミロの、乳首を触っている手を弾くとミロは機嫌よさそうに退き、サイドテーブルに用意されていた油壺を手に取った。手のひらサイズの瓶の栓を開け、中からとろりとした液体を手に垂らす。甘く、バニラとココナッツを足したような香りが鼻を突いた。
「省吾を傷つけるわけにはいかないからな」
ミロは省吾の膝をたてさせ、いわゆるM字開脚の形にした。
「えっ、お前がほぐすのか!?」
「そりゃ、今からするわけだし。指入れられるのは嫌か?」
一応自分で洗浄もしたし穴もほぐしておいた。蓮を思って夜ごと自分をなぐさめていた経験がこんなところで活きるとは、と遠い目になったものだ。
それを伝え、拒絶しようとした。しかし、彼の顔を見ると何も言えなかった。彼の顔は蓮にそっくりなのだ。もしかしたらそれがこちらの世界の流儀なのかもしれない。
「……嫌、じゃない」
蚊の鳴くような声で伝えると、さっそくミロの指が入ってきた。
「んっ……」
ぐちゅぐちゅといやらしい水音をさせながらミロの指が中で動く。
「さすが。柔らかいんだな。これならすぐに指も二本入りそう」
指が増やされ圧迫感が増す。根元まで押し入ってきたミロの指先がある場所をこすった途端、省吾の体が跳ねた。
「ああんっ……!」
「ああ、ここなんだ。気持ちよくなっちゃうところ。どうやらこっちの人間と異世界の奴はココのつくりは同じみたいだな」
言いながらもミロは容赦なく省吾の性感帯、前立腺をこする。例にもれずここも開発済みだった。
「あんっ……、あっ、そこっ、……ぁっ」
「気持ちよさそうじゃん。そんなに好き?」
コクコクと省吾はうなずく。
「そっか。俺に似た奴の事考えながらここ弄ってたんだ」
「…………っ」
視界が滲む。図星だが、蓮と似た顔の男に言われると苦しい。
省吾の表情からそのことを察したのか、ミロは慌てたように指を引き抜いた。
「ごめんっ……、もう言わない。だから、泣くなよ……」
「泣いてねーよ」
「うん、でも、泣きそうだったから」
ミロは手を離すと省吾の目じりに口づける。
「変な事言って悪かった。アンタ、Mっぽかったから、ちょっといじめたほうが喜ぶかなって」
「…………」
無言で省吾は睨みつける。ミロは機嫌を取るように頬に口づけた。そのまま片方の耳を指先でもてあそびながら、もう片方の耳たぶを甘噛みする。
「お願い、許してくれないか。せっかくの可愛い顔が台無しだ」
「……かわいくねーだろ」
大方多くの女性はこれで気をよくしたのだろうな、と思いながらも省吾は吐き捨てた。ノアがミロは慣れているし大丈夫と言っていた事を思い出す。こういうことか。と思った。
ミロが耳元で囁いてくる。
「かわいいよ。涙目になって睨んでるの、すっごくかわいい。興奮する」
ミロの言葉に省吾の心臓が喜びで震える。我ながら現金なものだと呆れる。あちらの世界でずっと片思いをしていた男と同じ声で囁かれているのだ。
「……もう、言うなよ」
返すとミロはほっとしたようにため息をついた。
「了解。じゃ、続きしていいか?」
「……ん」
ミロは体を離し再び省吾の中に指を突っ込んだ。今度は3本だ。バラバラと指を動かして省吾の中をかき混ぜる。
他人にそんなところを弄られたことのない省吾はそれだけでむず痒いような気持ちよさが背筋を這いあがってくるような錯覚を抱いた。
「そろそろ俺も限界かも。入れていい?」
熱い吐息とともに尋ねられ、省吾はコクコクと頷く。体格は連よりも鍛えられていて、割れた腹に流れる汗に心臓がどんどん高まっていく。
ぴたりと先端が省吾の後ろの入り口にあてられる。
「……入れるな」
ず、と蓮のものが押し入ってくる。これまで省吾が入れたことのある指やディルドとはまったく違う熱さと質量だった。
「あっ……、あぁっ……」
慣れない圧迫感に両手でシーツを掴むことで耐えようとする。
「痛い?」
ミロの声が降ってきて、省吾はコクコクと頷く。ミロは一度引き抜いて、今度は多めに油を自分のペニスに塗り、また入ってくる。潤滑の問題ではなく質量の問題なのであまり改善はされなかったが、その気遣いを嬉しいと思ってしまった。
少しずつ、けれど確実に中に入ってきたミロのものが奥まで到達する。
「んんっ……」
びくり、と体を震わせたらミロが省吾の下腹を撫でてきた。
「ここまで俺のが入ってるの。わかる?」
「んっ……、うんっ……」
「そう。よく我慢できたね。えらい、えらい」
言いながら、ミロは省吾の腹につけられた紋章を撫でてくる。いつもよりそこが敏感になっている気がして、ミロの指先が触れるたびに気持ちいい電流が集まっていくような気がした。
「じゃあ、動くね」
ミロは省吾の腰を掴み、一度引き抜くと再び中に入れる。ぴたん、と尻に睾丸の感触がした。
「あっ……」
「省吾のなか、すっごく気持ちいい。あったかくて、ぎゅうって締め付けてきてる」
ぱちゅっ、ぱちゅっとミロが腰を動かすたびに前立腺がこすられ、目の前に星が散るような錯覚を抱く。
「あんっ!……あぁっ……お゛っ……あ゛ぁっ……」
漏れた声があまりにも男の汚い喘ぎ声で、恥ずかしくなり省吾は口を押さえる。その手をゆっくりとミロの手が包み、外させられた。
「聞かせろよ、アンタの声。気持ちよさそうで興奮する」
ぎゅ、と目をつむり首を横に振る。こんな気持ち悪い声に興奮するわけがない。
「……そっか」
彼の目が細められる。興奮と愉悦が入り混じった表情だった。
先ほど省吾の事をMだとからかっていたが、ミロこそ生粋のSだろうと省吾は思った。
角度を変え、省吾の前立腺を的確に狙ってのピストンが始まる。
「~~っ! ぁあ゛あっ! んんっ! ん゛~~~~っ」
「ははっ……いい声」
どちゅどちゅと前立腺をいじめられ、すぐに達しそうになる。ちらりと視界に入った腹の紋章は薄く光り、三分の二ほど溜まっていた。
あれって確か、俺の満足度を可視化しているんだっけ。
思い至り、恥ずかしさと気持ちよさで頭が混乱する。省吾の状態はミロには手に取るようにわかっていたのだ。
「ぃあっ! あぁあっ……!」
なのに、体は絶頂に達してしまう。本当に自分はMなのかもしれないと省吾は考えた。
「あ、省吾、イっちゃった? 気持ちよさそうだね」
動きを止めないままミロは嬉しそうに口角をあげる。
彼の汗がぽたぽたと省吾の肌に落ちてきて、それも気持ちいいと思ってしまった。
ミロは省吾の腰を掴む手を止めない。
「でもごめん。俺、まだイってないから、もうちょっと頑張ろうな」
結局、こうして省吾は初めてのメスイキを味わった直後、連続でイかされ、気絶するように眠りについたのだった。
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