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第22話 「今は俺の事だけ考えてくれ」☆

 ちゅ、とミロと唇があわされば、省吾の頭は歓喜で満たされる。  こんなのはダメだと思っていても、体は正直にミロの体を喜んでしまった。ミロの舌が入ってくる。省吾が自分の舌と絡めるとそこから溶けていくようだった。 「んっ……ふ、はぁ……」  吐息が漏れながらも舌と舌を絡めあう。頭が白く染められ、何も考えられなくなってしまった。 「省吾、かわいい」  口を離され、顔をまじまじと見られた後告げられた言葉に省吾は顔が熱くなるのを感じた。同じくらいの身長で、筋肉もそれなりについている省吾をミロはかわいいと言ってくれる。  嬉しかった。たとえお世辞でも。 「耳まで赤くなってる」  言いながらミロは耳たぶを揉んでくる。  ドクン、ドクンと心臓が高鳴っていく。まだまだ好きなのだと実感させられた。  ベッドに押し倒され、ミロの手がローブを割り開いて中に入ってくる。彼が来る前に風呂で一生懸命洗ったあと、香油も付けておいたのだがまだ不安だった。久しぶりに抱かれて男の体に失望されたらどうしよう。薬で体は興奮はしてくれていても、心は萎えてしまっていたら。  そんな。考えても仕方がない事が頭から離れず、ミロとの情事を喜びきれない自分がいる。目を伏せると、ミロはちゅう、と省吾の乳首を吸ってきた。 「んんっ」  ビクンと体を跳ねさせる。ミロは少し不満そうな顔をして省吾を見た。 「敏感になった?」 「なっ……!」  なんてことを聞くのだろう。確かにクリスにたくさん舐められた。省吾は唇を尖らせてミロを睨む。ミロは今度は乳首を甘噛みしてきた。 「前は、こんなに熟れてなかったような気がする」 「んっ……、ふっ……」 「こんなにすぐに感じてもなかったし」  もう片方の乳首の先端を指の先でつつかれる。ミロにされているというだけで敏感になってしまう。 「お前だってたくさん舐めてただろ!」 「お前だって、ってことはアイツも舐めてたんだ」  ミロのからかうような口調に惨めな気持ちになる。嫉妬もしてくれないのだろう。 「……クリスの話はするな」  つい声が低くなる。ミロを見られなくてそっぽを向いてしまった。  ミロの頭が省吾の乳首から離される。 「……わかった」  ミロはつ、と省吾の腹についた紋章を撫でた。これまでにゲージは三分の一ほど溜まっていた。素直な自分の体が辛い。クリスとだったらまだまだ空の状態だったのに。  ミロは手に潤滑油を垂らすと省吾の竿に塗り付ける。ぬるぬるとした感触は気持ちいい。親指で先端をぐりぐりと擦られ、残りの指でくびれのあたりを締め付けられる。 「あっ……、んんっ……」  気持ちよくて腰を揺らしてしまう。急に生暖かい感触がして省吾は視線をそちらに向けた。 「っ、ミロ……!」  省吾のものがミロの口内に収められている。 「え、なんでっ……」  驚いてミロの髪を掴むが、ぐ、ぐ、とより強く押さえつけられるだけだった。これまでミロはお勤めの間省吾のペニスにはあまり触ってこなかった。舐められたのもこれが初めてだった。  ちゅぱ、とミロは口を離す。 「気持ちいい?」 「え、……あ」 「この油、結構甘いんだな。省吾が舐めてる時、おいしそうに舐めてたわけだ」 「っ!」  ミロは指についた潤滑液を舐めとった。甘い砂糖菓子のような味のするそれは省吾も知っている味だった。そんな動作さえ色っぽく見えてしまい恥ずかしくなる。  再びミロは省吾のものを口に含む。たまに歯が当たる無骨な舐め方に慣れていないことがわかって嬉しい。そもそもミロが男性の象徴であるそこを口に含んだこと自体、省吾からすると晴天の霹靂だった。 「あっ……、あんっ、んん~っ」  びくんびくんと体を跳ねさせる。同じ男性だからだろうか、気持ちいいところをピンポイントで攻めてくれて腰がとろけるようだった。 「最初甘いのに、先走りと混ざって変な味になるんだな」  口を離して感想を述べてくる。省吾ははぁ、はぁと息を荒げながらミロを見た。目があうと、ミロはとろりと微笑む。 「口の中で省吾のがびくびくって震えるの、かわいいな」 「なっ!」  ミロの言葉が恥ずかしくて省吾は視線を泳がせる。 「袋もパンパンになってるし、そろそろイきそう?」  片方の手で省吾の精嚢に触れてやわやわと揉んでくる。さらにもう片方の手でくびれをぐりぐりとしめつけ虐めるものだからそれだけで達してしまいそうだった。 「や、やだ、まだイきたくないっ」  ぶんぶんと首を振る。自分が奉仕するぶんにはよかったが、されるほうがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。 「そ。じゃあ、頑張って我慢しろよ」  言うとミロは「あ」と大きく口を開くと口いっぱいにまで頬張り吸い込んでくる。 「んんっ~~!」  そのまま口に入らなかった部分を手でしごきながらも頭を動かして亀頭を刺激する。 「あぁあっ、あっ、あんっ、あああっ」  ガクガクと省吾の体が震え、あっけなく達してしまった。  体中の力が抜け、深く息をする。あまりにもあっさりとイかされて悔しさすら湧いてこなかった。  ミロは一度口を開くと口内にある省吾の精液を見せつけてくる。  ぼうっと見ていると、彼はごくんと飲み込んだ。 「えっ」  ミロの振る舞いに目を見開く。一体今日はどうしたというのだろう。サービスがすごい。  ミロは微妙そうな顔をした。 「……苦い」 「そりゃそうだよ……」  呆れたような心持ちになって返す。ミロは飲み込んだことを見せつけるように一度口を開いた。少し白濁は残っていたがほぼ無くなっている。 「いつも省吾がおいしそうに飲むから、どんな味なのかと思ってた」  言われ、省吾の顔が真っ赤に染まる。ミロのものだから美味しく感じていたのだ。  ふふ、とミロは笑った。 「我慢するんじゃなかったんだ?」  楽しそうな声音に省吾は涙目になって睨む。効果はないのか、ミロは機嫌がよさそうに再び潤滑油を手に垂らした。省吾の尻の穴の縁にこすりつけ、つぷ、と人差し指を中に入れてきた。  久しぶりのミロの指の感触にきゅう、と締め付けてしまう。 「あっ……、そこ、慣らしてあるから、もう入れて」  懇願をするとミロは指を離した。 「こういうところは、変わってないんだ」  省吾はミロのほうを見る。ミロは眉を八の字にして苦笑し、けれど先ほどの言葉については触れなかった。 「中、入れるな」  ず、と縁にミロのものが触れる。  すぐに押し入ってきた。懐かしい感触に体が喜ぶ。情けないほどに求めていたのだとわかった。  奥まで入ると、ミロが体を止める。  彼の手が省吾の頭を撫でてきた。 「省吾、俺を見て」  ミロの目に熱がある。まるで自分の体に欲情してくれているみたいだと思い慌てて打ち消す。彼は薬を飲んでいるからだ。 「中、ぎゅうぎゅうって締め付けてる。気持ちいい?」  尋ねられ、必死に頷く。中に埋められたミロのものがただただ愛おしかった。 「中、もっと、もっと欲しい。いっぱいついて」  彼の瞳を見てねだると、中の屹立がさらに硬くなった。こんなにかわいい反応を見せる男だっただろうか。のぼせた頭では上手く考えられない。  頭から手が離され、腰を掴まれる。そのまま一度ミロはペニスを引き抜くと、ずちゅ、と再び中に入れてきた。 「あぁっ!」  カリが前立腺をこする。すっかり熟れたそこは喜んでミロに与えられる快楽を受け入れていた。 「気持ちいい。ミロ、そこ、いいっ」  必死に手を伸ばしてミロの背中にしがみつく。奥のほうまで届いて、そこから何とも言えない疼きが全身を満たす。 「ここ? ここが好きだったよな?」  ミロは的確に結腸を狙って腰を動かしていた。そのたびに頭が白くなってミロで頭が塗りつぶされる。気持ちいい。好き。大好き。言ってしまいそうになって唇を噛んで抑え込んだ。  そんな省吾の様子に気が付いたのか、ミロは省吾の唇に指を突っ込んでくる。 「口、怪我するから」 「あぁっ、あっ、ら、えっぁあっ」  声が抑えられない。せめて好きと言わないように律する。そんな省吾の努力を嘲笑うかのようにミロは結腸をついてくる。  視界が真っ白に染まった。 「あぁああっ」  体をびくびくと震わせ、精液をこぼす情けない絶頂をする。余韻がなかなか去ってくれない。気持ちいい快楽に身を浸していたら、またもミロが動いてくる。 「え!? な、えっ、俺、今、イった……」 「うん、ごめん、中でイきたい。ダメ?」  熱のこもった瞳に見つめられ、心臓がきゅんきゅんとときめく。コクリと頷くと、一層強く腰が打ち付けられ、ミロの体が震えた。  中で熱い飛沫の感触がする。  ミロがイったのだ。目をつむると脳裏にあの日ドラゴンを倒したミロが思い浮かぶ。立ち向かう姿はかっこよかった。  同時に、彼の足元にうずくまっていたクリスの姿もよみがえり、省吾はどうしようもいえない苦しさを感じた。  巻き込んでしまった。省吾が愛を求めなければ彼は、彼を始めとする兵士や街の人たちは怪我をしなくてよかったのだ。  重い体を起こして腹のゲージを確認する。クリスとはなかなか満タンにならなかったゲージは今は上まで登り切り、誇らしげに光ってすらいた。じわりと涙が溢れる。  もどかしくて、くやしくて、悲しくて、寂しくて。ぎゅ、と省吾はシーツを握った。 「……省吾」  ぎゅ、とミロが省吾の腕を引き、ベッドに再び寝転がすと抱きしめてきた。 「今は俺の事だけ考えてくれ」  頭がミロの胸に触れ、どくん、どくんと少し早めのミロの心音がする。きっと彼は省吾が先ほど誰の事を考えたかなんてお見通しなのだろう。その上で罪悪感を抱かないようにと抱きしめてくれている。  そっとミロの体に自分も手を巻き付ける。  涙が止められそうにない。とん、とん、とミロが背中を叩いてくれる。  彼の優しさが辛かった。  こうして、省吾とミロは再び体をあわせるようになった。鍛錬もミロの部隊に戻り、兵士たちに嬉しそうに歓迎されて省吾は何とも言えない気持ちになる。文字の勉強は家庭教師が引き続き教えてくれていたが、プライベートで省吾はミロの、ミロは省吾の居室を訪ねて雑談をするようになっていた。  傍から見たら仲睦まじい二人に見えるだろう。実際、喧嘩をすることはあってもすぐに仲直りをするし、省吾はもうミロ以外を指名しようとはもう思っていなかった。出来なかった。    クリスや兵士達の血まみれの姿が忘れられなくて。その間、魔獣は襲って来ず、安定した日々を過ごせていた。  そして、二年が過ぎた。

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