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ー三年後
季節は、春。
晴天な空の下には、八分咲きの桜が、咲いている。
あれから、三年の時を経て、彼女は、嫁いだ。先方からのお願いで、是非、結婚をという理由だ。
あれだけ、王宮内には、入りたくないと、思っていた『
藤松 咲春(ふじまつ さくら)』は、十六歳になっていた。
世に言う政略結婚が、成立してしまったのは、誤算だったかも知れない。
お陰で、王宮は、騒がしい。
最もの理由は、咲春が、左大臣の娘である事。嫁ぎ先が、帝の血筋の者というのが、原因だ。
「これを、幸にして、王族の皆は、安泰。しかし、私は、軟禁生活を味わう羽目になる…」
如何にして、あの男を黙らせよう。
密かに、芽生える真っ黒い計画。
艶ある長い髪が、風に舞う。
『左大臣の娘だからといって、身だしなみを忘れてはいけない。沢山、甘えかされたかも知れないが、俺の所でも…同じ、我が儘が通用するとは思うなよ』
結婚する前に、言われた言葉。
甘えかされた所か、如何に、この世ではない者から身を守る為に、術式を、叩き込まれたものだ。
ー…相手に、不覚無し。
結婚した相手が、帝の血筋じゃなければ、女性は、結婚を蹴り飛ばしていた。
それをしなかったのは、父親の顔もあるが、一番は、王宮内に居るヘタレとは、結婚をしたくなかったのが理由。
何処の馬の骨かも解らない輩に、自分の貞操を奪われてたまるかという思いが強かったのは、間違いない。
ー…それならと。
選んだ結果が、今の夫。
鳴呼、言うなれば、屁理屈男だ。
己の容姿を理解している。
それ故に、鼻に付く、社畜人間。
脳裏に浮かべるだけで、腹立たしくなってきた彼女は、深く、息を吸い、深呼吸をする。
黒髪に、切れ長の瞳。咲春とは違く、純粋な黒色をしていた。
手で、前髪を上げれば、見える双眸は、若干、若い感じがする。
だけど、彼は、彼女より遥かに、年上なのだ。
よく…。
今まで、お見合い話が出なかったのが不思議なくらいだった。
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