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【孟山side】
この、季節は、何かと、公務やら、貴族の暇つぶしに、付き合わされて忙しい毎日。
つい、こないだ嫁をもらった身ではあるが。世間は、気にしない様子。
もう少し、配慮が、欲しい。
独身で、通すのも一手だと思っていてが、左大臣の娘なら、断る必要もないと、思った。
実際、逢ってみれば、噂通りの美人だし、何分、申し分はない。
ただ、第一印象は肝心だと習っている。
彼女は、冷めた感じの雰囲気を全身から滲み出しているんだ。誰も、近寄らせない感が溢れている。
『お互いに、初婚ですし』
『良き、縁談だと思いますよ。孟山様…』
御上の御前もある為に、其処は、納得しざえない。
私の方が、年上なのだからと、言い聞かせていたが、最近は、忙しさの合間になんて考えてはいたが、相手は、気にしていない模様。
それが、余計に、気に食わない。
彼奴。
「今日は、半日だから、待っている様に、申したのに…。夫より、他の事に、現を抜かしているとは」
腹立たしくって、仕方ない。
良き妻であろうとするなら…。
帰りぐらい待っていても、バチは当たらないだろう。
-…何処で、道草を喰っている。
「…咲春」
誰も居ない部屋で、妻の名を呟く。
この侘しさを感じるのは初めてだな。
契を交わす前に、俺は、彼女に言った。
『夫婦になる前の掟を作ろう』と。
それは、お互いの境界線があるからだ。
左大臣の娘である咲春は、他の貴族からも人気が高い女だった。
家系が家系なだけに、出来た娘。裁縫だけじゃなく、才もある。
あれが男なら、他の道も進めただろう。
そんな事を考えながら、俺は、溜め息を吐いた。
本来、妻とは『お帰りなさいませ、旦那様』と、畏まった姿勢で居るべきじゃないだろうかと思う。
しかしながら、咲春は違う。
彼奴は、俺を見下しているんだ。
あの、冷めた瞳が、そう告げている。
「だけど、夫婦なんだ。少し、譲歩しても良いだろう」
それさえも、許されない関係なのだろうか。
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