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二年という月日は、あっという間に、過ぎていく。 今だに、溝があればと言われたらあるのかも知れない。普通の夫婦とは、主に、どいゆう暮らしをしているのか解らない。 上司達に、相談する必要性も無いと心得ている。 だからか、彼奴が、拗ねている理由が俺には解らないのだ。 大奥という世界が、彼女も、女だから理解しているだろう。 本来なら、一夫多妻が当たり前に、義務付けられている。世継ぎを作る為には健康な身体でなければいけない。 より良い血筋を残す為には、毎朝の一物計りは、大事な作業だ。 勃起したサイズにより、女を決めていく。 無論、締まりが良い女は、尚の事、抱き甲斐があるだろう。 着飾った夫人達は、色香を好む。 「咲春は、違うな…」 どちらかと言えば、彼女は、着飾らなくても、黒髪が目を惹く。 一目で、左大臣の娘だと気付く、輩も居る。 仄かに香る匂いは、上品なお香の匂い。 白桜の薫りとでも言うのか。 兎に角、本人に合った香りだ。 どいゆう風に、調合をしているのか知らないが、あれだけは咲春に合うと、素直に断言出来る。 俺の中では、断トツに、お気に入りナンバーワンだ。上手く言えないが、白桜の香りを抜いたら咲春じゃない気がする。 それは、お世辞じゃなく、本音だ。 恵まれた環境で生まれた俺が、女性に対して気を使える言葉を言えるとは思ってもみなかった。よく、貴族の者達は『●●の上、今日も、一段と…雅ですなぁ』と、言っている。 それが、お世辞だと解っていても、貴族の姫君達は喜ぶ。 謂わば、男性の言葉は、どんな形であれ、嬉しいのだろう。 この時代、あるあるなのかも知れない。 俺は、咲春の黒髪を手で掴みながら、時折考えてしまう。 我が妻も、周りの女みたく、煌びやかに飾って、姫らしさをアピールしてしまえば。 なんて、甘い考えが浮かんだ瞬間に、消えた。

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