7 / 23
1ー5
ふんわりと、浮かぶ白い玉が、パチンッと。
弾けた。
その瞬間、二人の運命は廻り始める。
平安京の時代に、二人は、男と女。
夫と妻だった。
互いに、支えながら生きていくという事を学びながら、育んでいった愛。
それは、軈て、形として現れる。
何時の日か。
『貴方様が…女性に、定義を持ちません様に』
夜空を彩る星に願う姿は、健気だ。
風に吹かれる桜の花弁が…。
彼女を包む様に、舞う。
これぞ、いと、うつくしい。
そんな声が、何処か遠くに聞こえていたとしたら、春の曙に、包まれ、眠っている者の元かも知れない。
だけど…。
まだ、声には、答えてはくれない。
けれど、桜の精は、聞いていた。
-…伝えるには。
彼女の、魂が共鳴してからなのだろう。
これは…。
昔々、京の都を騒がせた左大臣の姫君と、その、夫の甘い甘い物語になる筈だった。
運命とは悪戯とは言ったものだ。そして、神も悪戯で、気紛れだと。
廃れたと思っていた巫女の力が、世代を超えて、継がれるとは思っていなかった。
開かれていく、歴史の中で、巫女としての力が、目覚めたのは、二回。
そのどちらも、女だったのを、彼女は忘れていた。
忘れていたから、来世で、起きうる事件は知らず、天命を真っ当したのだ。
鳴呼…。
神よ、何と、残酷な。
天命を真っ当したなら、その仕打ちは、無いと思います。
今一度、考えを改めて下さい。
でなければ、グレてやります…。
そんな切なる声も、聞いてはくれず、彼女の運命は、来世で、魂の共鳴を始めるのであった。
あの、桜が、再び、導くとは知らずに。
深い眠りに入っていった。
神の、ほんの気紛れ。
ほんの…。
悪戯。
白桜の香りがする左大臣の姫君に。
綺麗な黒髪が、何とも、素敵だと思ったから。
少しばかり、お付き合い下さいませ。
-…●●●さん。
シャラーン、シャラーンと、鈴の音が鳴ると。
白い霧が、辺りを包み込んでいった。
ともだちにシェアしよう!

