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巻き込まれたのは、父親だが、最初から勝利は決まっていたので言わなかったらしい。
実際、長男である『零霧(れむ)』が、勝った。これは、千炎華國でも、噂だ。
だけど、零霧は、彼に『燈炎帝の中でしか…自由を許さない』と。
俺だったら、離縁する。
なんて、言葉が、絛緇の頭に浮かぶ。
よく、鳥籠の中で飼われる事を選んだ物だと、元老連中も、感心した。
それくらい、瀧覇の決意は堅かった。
縛られるという意味を…。
-…理解しているんだろうな。
でなければ、いくら篤霧の策だと言え、従う必要もないと、彼は思えた。
けれど、阿利梛の母親だけあって、肝が据わっている。
「それより、砂闇、ソナタ…北の神子『神楽帝』の現神子の息子と、契を交わす事が、決まっているよな」
ふっと、思い出し、絛緇は、吐いた。
「あぁ…」
「アチラは、如何にして、ソナタを選んだんだ?」
「当の昔に決まっている。覇鞠が、俺の許婚というのは、北の神子と南の神子の話し合いの元で、決まった事だ。折角の縁談を有耶無耶にする程、俺は、落ちぶれていない…」
「ふっ」
相変わらず、曲げない男だと、自覚させられる。
砂闇の性格は、幼い頃から出来上がっていた。次期神子としての教育の賜物だと思う。
主として仕えるには、全然、申し分無い相手だ。
澄雲帝は、これからも彼等の家系を慕うだろう。一生を共に過ごす。
主従関係に、問題無しだな。
思わず、含み笑いをしてしまう絛緇。
「ま、俺は、ソナタが、母上を失望させなければ…それで良い…」
鳴呼、そうだったな。
“燈炎帝 阿利那”とは、綺麗な顔立ちをしながら、凄く、恐い人物だった。
母親似というよりは、隔世遺伝で、篤霧の性格と、父親の性格を含んでいる現神子。
それを、時折、彼は忘れてしまいそうになる。
一家、全滅だけは避けたい。
その為の、策を練なければ危うい立場になってしまうのを自覚していた。
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