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2ー9
何時だったかな。
こんな風に、引っ張られた日があった様な。
だけど、一度も、抵抗出来ずに、相手を、睨み付けたっけ。
『良い気にならないで…』
という科白が、吐かれた瞬間、彼は、酷く。
傷付いた顔をしていた。
あの時、何て言葉を掛けて良いか解らなかった“私”は、距離を置く事を決める。
良き妻とは?
貴方が、求める“私”は。
「そいゆう顔をするな、水春」
「えっ…」
「苦しそうな表情は、ソナタには似合わないぞ」
「…っ」
可笑しい。
そう、桜が、思い出させている感じがするんだ。
過去の僕を…。
紅月様は、優しく、頭を撫でてくれた。
「あまり深く考えるな。まだ、子供のままでいろ」
嬉しいけど。
無理な話だ…。
母みたく、立派な総帥にならないといけない。
その為なら、暁野帝の地位すらも利用する。
これは、僕に課せられた運命なのだと、自負しているからこそ、甘えは、身を滅ぼす。
強く、立派で、利口な総帥…。
それが、僕の未来なのだろう?
『-…何故、そう思うんですか…?』
暁野帝は…。
由緒正しき、賢明な人材を育てる家系。
『だから、天命を末梢出来ないのだと…気付かないのか…』
何処からともなく、聞こえてくる声音。
『何時か、気付く日が…』
人に厳しく、自分に厳しい姿が、見えた気がした。
「解りましたから、頭が、禿げます…」
「…解れば良いんだ」
もう、折角のスタイルが、台無しだ。
今日は、ふんわりヘアーにしたのに…。
「しかし、紅月様、あの桜は…」
「あぁ、あれは…聖月様のお母様が、植えた桜らしい。何でも、前世の自分が見えるという噂の桜だ」
「へぇ…」
「夜になると、美しいぞ。桜の精が舞ってくれる。そういや」
凄く、興味唆られる話だった。
紅月様は、何かを思い出した様に、言葉を止める。
後から出たのは『いや』と言い、去って行った。
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