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2ー10

ほんの少し、昔に浸っていた気がする。 ぽっりと、雨水が落ちた。 記憶の片隅に残したモノが、目覚めようとしているのか。 あの、桜の下で。 『●●●さん…』 そうか。 この時代は、私を受け入れる訳には…。 『あの時、貴方は、言いました。『この時代で、君は…何を学ぶんだろう』と。懐かしいですわね。しかし、私は、転生は…』 望まないと言ったら、罪になるのかしら。 全ての力を使い、肉親を転生させるのは…。 -…不可能。 だから、実験なのよ。 そう、神は、気紛れ…。 僅かな水すらも掬い取るのは、難しい。 けれど、目覚めない夢の様な感覚に襲われるのは、あの時、罪を犯したからだろう。 もし…。 という言葉は、不謹慎ね。 『●●●さん…』 夢の続きは、あと少し長くなりそうです。 それまでに私が、転生出来たら。 -…逢えますね、あの頃の様に。 夢現、桜の花弁が、遠い過去を映す。 貴方が、力に目覚める時。 “朱鷺(とき)”は…。 まだ、夢の中を彷徨う。 白く伸ばした羽根は、飛ぶことをせず。 鳥籠の中か。 それとも、自由を望むのか。 これは、神ですらも知らない話。 花吹雪が、記憶の渦を消していく。 鳴呼、これは、物語の断片が、開かれようとしている。 でも、彼は…。 過去の波に呑まれるのだろう。 -…記憶の狭間に、二人の人物は。 温かな雰囲気を醸し出しながら…。 ぽっりと、染み込んでいく。 ふっと、光が差している気がしたのは。 実験の証か。 『記憶の欠片が光っているわ…』 成長する証なのかは、これからだ。 花嵐が、巻き上げながら神の姿を消していった。 『これから、貴方は、運命に翻弄されるのだろう。未来で、逢えるのを楽しみにしていますよ…。お兄さん』 そう、告げる男は、身を翻しながら、歩いて行った。 -…何時か、言った、彼は。 男の本能を剥き出す。 獣だと、泣き叫ぶのか。 それだけは、阻止したい。 だけど、桜が魅せる夢は…。 白く、淡い、恋物語を描いていく。

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