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第三章:朱鷺と桜(咲春side)
-聖界·白桜の大木
天命を真っ当した時、私は、何故か。
白い靄が掛かった世界に居た。
ほんのり薫る甘い匂い。
「此処、何処?」
最初の一声が、そうだった。
京の都には、こんな場所は無い。
寧ろ、あったら恐いわ。
ふわりと、柔らかな風が吹くと、辺りが、はっきり見えて来た。
其処に広がる世界は、声にならないぐらい美しい。まるで、御伽噺に出てくる様な夢の世界みたいな感じだった。
広がる草原に、ぽつりぽつりと咲く、青い小さな花々。
京都の御殿でも、見られない光景だ。
-…綺麗。
何時だったか、禰宜に話を聞いた事がある。私達が生きる世界は、生を授かりながら神のご慈悲の元で、成り立っているが、死を司っている場所は口では、言い切れないくらい真っ暗なのだと。
でも、此処は違う。
「あれ?珍しいわね。貴女」
「へっ…」
突然、声音が頭上から聞こえた。
視線を上に向けると、透き通る白い髪をした少女が、微笑んでいる。
「私は…まだ、寝ているから、正式的に、これは、本体じゃないの」
「はっ!」
「あ、人間には、難しいですわね。此処に…人が来るのは、初めてだから、つい」
「どう見ても…人間よね?」
ふんわりとした雰囲気に呑まれそうなくらい彼女は、あどけない表情をした。
「あぁ…人間とは、かなり異なるわ」
考えた様に、吐いた科白。
「でも、姿は…」
「そうね。人形を取る時もあるわ。下界では、色んな姿になるわね。例えば…神話に出てくる龍神。それから、弁財天。貴女が住んでいた京都では、貴船神社が、有名ね。かの有名な安倍晴明が勅命を受けた場所。そして、丑の墓刻参り、後は、アチラの神は、女龍神で、水と雨を司る神でしたね」
「話が付いていけないけど、貴女は、神という事で、把握して宜しいのかしら…」
「えぇ…間違っていませんわ。ただ、神にもランクがありますの」
俄には信じ難い話だけど、彼女は、嘘を付いていない気がした。
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