20 / 23
3ー1
けれど、雰囲気が、何とも…。
何で、私が、此処に居るのかも解らない。
確かに、京都では、一の宮以外に、貴船神社は有名だ。毎年、能楽や神楽が広げられている。
特に『尾張』は、有名だろう。
私も、観に行った事があるくらいだ。人間の醜さが、一番解かりやすい舞劇じゃないだろうか。
面は…。
人を表す。
あれが、語源なのかは解らないけど『女は恐い』とか『鬼にもなる』とか、貴族の中では、噂になっていたわ。
雰囲気あるのよね。
暗闇の中、松明が焚かれていて、そして、丑の墓刻参りで有名なもんだから鬼が出てきそうなイメージが湧く。
舞っている者達の迫力ある演技に、龍笛の音色。
「京都の一の宮は、二つあって、下賀茂神社と、上賀茂神社ですわ。確かに…貴女が言う様に、貴船神社も有名ね。だけど、ランクって、何?」
「神の世界では、創造神が居て、その下に国造り神が居るの…。それから、枝がこう、生えていて、神々が存在するのよ…」
つまり、大奥で言えば、御上が上で、その下が、左大臣と右大臣みたいな感じかしら。
システム的には、そうよね。
「えっと、人間で言えば王族と貴族みたいな?」
「まぁ、簡単にはそうかも知れませんね。ふふっ、貴女って、面白いわ…」
「そうかしら」
「えぇ、人間にしては、面白い。私が知る人間は、醜さも残酷さも含んだ者を言うから。貴女みたいな人は、初めてだわ…」
彼女の瞳が一瞬、翳りを落とす。
「人間とは、汚い物です。各言う私だって」
「そう、威勢を張らなくったって、食べたりしませんよ。貴女は、不思議ね。この世界で、呼吸している…」
それが、不思議に値するのかしら。
思わず私は、首を傾げた。
「普通は、呼吸出来ないの?」
「余程の…神力が無いと、多分、出来ないわ。並大抵な人間が、此処で呼吸するのって大変なの。だって、聖界とは、創造神が棲む場所だから…」
今、衝撃的な言葉が、彼女の口から出た。
ともだちにシェアしよう!

