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第18話 進展 ①

 瑞稀の初めてのヒートは3日間続いた。  1日目はソファーからベッドに移動して、食事をする間も惜しんで身体をつなげた。  2日目は瑞稀の身体に無理をさせないように、晴人はラット抑制剤を飲み、コン○ームをつけて肌を重ね、3日目はヒートが落ち着いてきたので、二人で抱き合いながら眠った。  2人、一緒にいるだけで幸せだった。  晴人は瑞稀の気持ちが聞け、瑞稀は自分の気持ちを伝えることができ、今まで2人の間にあった壁のようなものが、なくなった。  ヒートから4日目の朝。  瑞稀の体調も戻り、いつものように晴人が作った朝食を2人一緒に食べた。  そして食後のコーヒーを瑞稀が淹れ、ソファーに座る晴人に渡そうとした時、 「一緒に住もう」  真剣な眼差しで、晴人が言った。 「え…?」  瑞稀の動きが止まり、心臓がドクンっと大きく脈打つ。 「俺は瑞稀とすぐにでも、一緒に暮らしたいってずっと思ってた。でも『まだ早いのかもしれない』『瑞稀を焦らせてはいけない』って、踏みとどまってたんだ」 「…」 「だけど、今回ずっと一緒にいて、もう瑞稀と離れて暮らすなんて考えられない」  晴人は瑞稀の手を取り、自分のほうに引き寄せる。 「返事は急がない。でも少し考えてみて」 晴人さんと一緒に? 一緒に暮らすの? ずっと一緒にいられるの?  瑞稀の胸がドキンっと高鳴る。  想像してしまう。  晴人との生活を。  今までは一緒にいても、その後訪れる別れがちらつき、時間が近づくたびに悲しくなっていた気持ちが、これからはなくなる。  ずっと一緒だ。  毎日とはいかなくても一緒に住めば、朝起きた時の「おはよう」も、食事の時の「いただきます」も「ごちそうさま」も、「いってらっしゃい」「おかえりなさい」も、「行ってきます」「ただいま」も、寝る前の「おやすみなさい」も言える。  大好きだという気持ちも、ずっと伝えられる。  一緒の家に帰り、お互いを感じられる。 もう離れ離れに、なりたくない。  わがままだと思っていた。  だから、そう思っても言ってこなかった。  何も持っていない自分は、晴人のそばに居続けていいのか?  ずっと考えていた。   晴人さんに見合う人が現れたら、身を引こう…。  瑞稀はずっと、そう決めていた。  でも、一緒に住んだら、もう晴人と別れることなんて、できない。

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