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第19話 進展 ②

「本当に……いいんですか……?」  俯きながら消えいるような声で、瑞稀は言った。 「え?」 「本当に、僕で、いいんですか……?」 「いいって?」  瑞稀の言いたいことがわからず、晴人は瑞稀の言葉に静かに耳を傾ける。 「僕、何も持ってません。晴人さんの役に立てるような何か……、僕は持ってません。でも、こんな僕でも……一緒にいても、晴人さんのそばにいても、いいんですか……?」 「?瑞稀、それ、どういう意味……?」 「僕、これ以上晴人さんと一緒にいたら、もう晴人さんと別れることなんて……できない……」 「!? 瑞稀は、俺と別れる気で……いたのか?」  晴人の顔から血の気が引く。 「晴人さんに見合う人が現れたら……。その時は……!」  瑞稀が言い終わらないうちに、晴人は勢いよくソファーから立ち上がり、 「そんな! どうして、そんなこと!!」  瑞稀が逃げてしまわないように、強く抱きしめる。 「だって僕、何の取り柄も人脈も持ってないです……。晴人さんの役に立てそうなこと、何もできないです……」  何もない自分が不甲斐なさすぎて、涙が出そうになる。 「そんなことない!」 「僕、これ以上晴人さんと一緒にいたら、もう、本当に、別れられなくなってしまいま……」  瑞稀がそこまで言った時、 「瑞稀!!」  いつも穏やかな晴人が叫び、瑞稀は体をビクっとさせた。 「瑞稀、それ本気で思ってる?」  今まで見せたことのないような怒りの表情で、晴人は瑞稀の顔を覗き込み見据える。 「……」 「もし、本気でそう思ってるなら……」  静かに、だが晴人の怒りが、瑞稀にヒシヒシと感じられる。 どうしよう……。 晴人さんを怒らせてしまった。  瑞稀の頭の中で『どうしよう』が、ぐるぐる回る。 「ごめんな……さい……」  晴人の胸の中で、瑞稀が震える。 「!」  震える瑞稀を見た晴人はハッと息を呑み、 「ごめん、瑞稀。謝るのは俺の方だ……。大きな声を出して、ごめん」  力任せに抱きしめていた腕の力を、晴人は緩める。 「瑞稀、俺を見て……」 「……」  優しく語りかけるが、瑞稀は萎縮してしまい、どうしても晴人の顔を見ることができない。 「瑞稀は俺が瑞稀の何かの役に立つから、付き合ってるの?」 「ち! 違います!」  思いもよらいない晴人の言葉に、瑞稀は晴人の顔を見上げ即答する。 「じゃあ、俺に人脈があるから?」 「違います!」  即座に否定をした。 「じゃあ、どうして俺と一緒にいるの?」 「それは……」 そんなこと決まってる。

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