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第25話 二度目の…… ③
ーーー
嫌だ…嫌だ…。
本能のまま動いてしまう腰も、指も嫌で仕方ない。
だが擦らずにはいられない。
もう片方の手で、楔を握り上下する。
「はぁ……ぁぁ……」
吐息が漏れ出す。
こんな姿…晴人さんには見せたくない…。
晴人の香りがする衣服に埋もれ、自慰をしてしまうことが、晴人の事を汚しているようで、ヒートになり本能のまま流されている瑞稀自身が穢らわしく感じる。
「ぅぅ…」
涙が溢れた。
涙が溢れるのに楔を擦る手も、弱いところを押し上げる指も止まらない。
「あ……ッぁぁ……」
優しく触れてくれる晴人の手ではなく、自分の手。
悲しさと虚しさが胸を締め付ける。
「助けて…晴人さん…」
静まり返った部屋の中、消えかけた声で、晴人の名前を呼ぶ。
自分で刺激を与えるが、達することができない。
火照り、内側から疼く身体をどうすることもできず、だた瑞稀の香りだけが濃くなっていく。
暗い部屋に1人、どのぐらいいただろう…。
「瑞稀!」
バタンっと勢いよく開けられたドアから、息を切らした晴人が飛び込んで来た。
晴人さん!
あれだけ晴人に会いたかったのに、本能に飲まれ、自慰さえしてしまった今の自分の姿を晒 すのがいたたまれず、瑞稀は晴人の服の中に隠れる。
「瑞稀…」
優しい晴人の声と、ゆっくりとした足音が聞こえる。
「辛くて怖かったのに、よく頑張ったね」
瑞稀には、服の上から晴人が瑞稀を撫でているのがわかった。
「瑞稀、出てこられる?」
晴人は穏やかな口調で話しかけるが、服の中に隠れている瑞稀は首を横に振り、服が横に触れる。
「どうして?」
なおも晴人は優しく語りかけると、
「こんな姿…晴人さんに見せられない…」
本能に流される自分が情けなくて、涙声になる。
「大丈夫。俺はどんな瑞稀でも愛してる」
晴人は服の上から、瑞稀を抱きしめた。
「それにね、瑞稀が俺の服を集めて、巣作りしてくれていて本当に嬉しいよ」
「……」
「出ておいで、愛しい瑞稀…」
「……」
たくさんの服の中から、瑞稀は顔だけ出した。
「ただいま」
晴人が微笑みながら言うと、
「お帰りなさい…」
瑞稀は服で体を隠しながら、晴人の胸に飛び込んだ。
「ただいま」
晴人はもう一度言い、瑞稀の髪にキスをする。
瑞稀の心の中に、温かなものが流れてくる。
情けなさや自分に対する嫌悪感も、溶かしてくれる。そんな温かさ。
「大事な日なのに、こんなことになってしまって、ごめんなさい…」
「瑞稀は何も悪くない。俺の方こそ、瑞稀が辛い時にそばにいてやれなくて、ごめん」
瑞稀の背中を晴人がさする。
「そんな……。あ!かすみさん!かすみさんはどうしていますか?」
かすみさんに迷惑ばかりかけてしまって…。
僕は自分のことばかり…。
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