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第30話 ドライブ ②
しばらく行くと一軒のカフェがあり、お昼時だったので、そこで昼食を取ることにした。
店内に入ると、眺めの良いテラス席に晴人と瑞稀は案内される。
メニューを色々見て、2人は日替わりランチの『ミックスランチ』を注文をした。
程なくして運ばれてきたランチプレートには、
タルタルソースがかかったお頭つきエビフライ、ハンバーグにデミグラスソースがかけられていて、生野菜のサラダのそばにはポテトサラダもある。
他にはオニオンスープと外はカリッと、中はフワッと焼き上がったフランスパンが添えられていた。
「わぁ~、美味しそう」
瑞稀は鞄からスマホを取り出し、料理を撮る。
「本当だな」
晴人は嬉しそうに料理を撮る瑞稀を、スマホで撮る。
「あ! 晴人さん。僕は撮らないでください」
あわてて瑞稀は晴人のスマホを取ろうと、手を伸ばす。
「どうして?こんなに可愛いのに?」
撮ったばかりの写メを、瑞稀に見せる。
そこには、嬉しそうに微笑みながら料理を撮る瑞稀の姿が。
「わ!もう僕、食いしん坊みたいな顔してるじゃないですか」
さらに手を伸ばすが、
「ダ~メ」
晴人は瑞稀の額を、ツンっと突く。
「もう……」
唇を尖らせ、瑞稀は拗ねる。
そうすると、またパシャリ!
スマホのシャッターが切られた音がした。
まさか、こんな変な顔、撮られちゃった!?
慌ててさらに晴人のスマホに手を伸ばす瑞稀の手を晴人が掴むと、手の甲にキスをする。
「さ、温かいうちにいただこう」
外出先で、まさか手の甲にキスをされると思っていなかった瑞稀は目を大きく開き、照れながらも、晴人に促されるように手をを合わせ、早速食べ始める。
「美味しい……」
一口食べた瑞稀から、笑みが溢れる。
どれも美味しくて、一口食べるごとに瑞稀の顔が綻ぶ。
その顔が見たくて、晴人は「瑞稀、アーンして」と自分のハンバーグやエビフライを瑞稀の口の前に差し出すと、瑞稀は差し出されたハンバーグやエビフライをパクリと食べる。
そして笑みがこぼれ、また晴人は食べさせる…を繰り返す。
いつもは晴人と出かけたりランチを食べに行くことはあっても、瑞稀の仕事の時間を気にしなながらのデート。
だが今日は時間を気にせず食事も会話も楽しめる。
二人の間の時間はゆっくり進む。
三種類あったデザートを完食し、カフェラテまで堪能した二人は、店を出た。
瑞稀一人パクパク食べたので、瑞稀のお腹ははち切れそうだ。
「もう……何も食べれません……」
「あはは、瑞稀は少食だから、あれぐらい食べても、大丈夫」
今日の晴人さんはよく笑ってる。
瑞稀には悟られないようにしていたようだったが、学会が近づくたびに、晴人の顔から疲れの色が滲み出ていた。
そんな晴人の助けになりたかった瑞稀だが、家でのサポートぐらいしかできず不甲斐ない思いをしていた。
でも今日の晴人は朝からずっと笑顔だ。
よく笑い、本人は気付いてないが時折鼻歌まで歌っている。
ずっとこんな時が続けばいいのに。
晴人との穏やかな未来を考える。
刺激のある日々がなくても、特別なことがなくても、ただそばにいられる……。ら
そんな夢みたいな時間を晴人と過ごしていきたい。
「なぁ瑞稀、近くに海の見える公園があるんだけど、そこに行ってみないか?」
さっきまで笑顔だった晴人が目を伏せ、少し緊張した表情になる。
さっきまで笑顔だったのに……。
何かあったのかな?
瑞稀の中で、小さな不安が芽生える。
「晴人さん……何かあったんですか?」
「……。いや…特にはないんだが……」
晴人にしては珍しく、歯切れの悪い言い方。
これは絶対何かある……。
悪いことだったらどうしよう……。
不安な気持ちが、大きくなってくる。
大きく膨らんだ幸せの風船が小さくなっていくように、朝からの楽しい気持ちがしぼんでいく。
嫌なことを言われるなら、行きたくない……。
「あの、僕……」
行きたくないと言おうとした時、晴人はポケットに手を入れ、何か決心したように
「すごく近いから、行って欲しいんだ」
と言った。
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