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第35話 体調不良 ②
病院は大きく内科、耳鼻科、皮膚科、眼科などから、産科、婦人科、バース科まである。
立ちくらみは内科……かな?
受付で問診票を記入し、内科の前の椅子に座り名前が呼ばれるのを待った。
「成瀬さん、どうぞ」
看護師によばれ診察室に入る。
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
瑞稀の前にいたのは、温和な声のおじいちゃん先生。
「僕が大袈裟なのかもしれなせんが、最近立ちくらみが酷くて……。今日は特別酷くて、目の前が真っ白になって倒れそうになりました」
瑞稀は病院が苦手だ。
以前体調不良で受診した時、瑞稀を診た医師から「こんなことで来たの?」と言われ、それから自分はしんどいと思っていても、世間一般からしては大したことがなくて、『こんなことで受診するのは、自分が大袈裟なのかもしれない…』と思ってしまうからだ。
「そうなのですね。それは辛い思いをされましたね」
医師は瑞稀に寄り添うように言う。
「僕、大袈裟ではないですか?」
そんなことを聞いても、瑞稀の本当のしんどさはわからないのに、聞いてしまう。
「大袈裟ではないですよ。人それぞれ感じ方は違いますが、不調を感じたれたと言うことは、あなたにとって大変辛いことだと、私は思っています」
医師はしっかりと瑞稀の目を見ていう。
この先生なら、自他の症状を言っても大丈夫かもしれない……。
「先生、実は他にも体調不良がありまして……」
「他に何がありますか?」
「実は……」
食欲不振、胸焼け、体に熱がこもるような感覚があることを伝えると、
「あなたはオメガですね?ヒートはいつきましたか?」
「5月です」
「ヒートは定期的にやってきますか?」
「まだ2回しかきていないので、正確にはわかりませんが、1回目と2回目はだいたい3ヶ月空いていました」
「そうですか……」
医師はPCにそれを打ちこむ。
「ヒートの時、性交渉はありましたか?」
際どい質問に、一瞬返答に戸惑ったが、
「はい」
と答えた。
「なるほど……。それでは一度、ニ階にある産科を受診していてください」
「え……?」
「私は内科ですので詳しい診断はくだせませんが、今、成瀬さんが不快に思われている症状は『つわり』かも知れません」
「え!?……つわり……ですか……?」
つわりって、妊娠した時にでる、症状……?
「もしそこで診断がくだされなければ、また内科 に戻ってきてもらえませんか?」
「……」
もし『つわり』だったら……。
まだ結婚もしていない上に、番にもなっていないのに、妊娠したと晴人に伝えればどんな反応をされるか…と不安が募る。
不安をかき消すように、チェーンをつけ首からぶら下げている晴人からの指輪に触った。
「この病院には妊娠をフォローするところもあります。そこで相談もできますよ」
「……」
「まずは不快な症状の原因を探すことが、一番ですよ」
瑞稀の不安を取り除くように、医師は微笑んだ。
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