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第37話 !! ①

瑞稀の体調不良は『つわり』で、今、妊娠3ヶ月だそうだ。  あまり食事が取れていないことと、立ちくらみがあるということで点滴を打ってもらった。  会計を待つ間、先ほどもらった子供のエコー写真を見つめる。 僕たちの(・・・・)の赤ちゃん…。  愛しさが込み上げてきて、まだ大きくないお腹に触れる。  お腹(ここ)に赤ちゃんがいるんだ。  たしかにお腹(ここ)には子どもがいる。  小さいが確かに新しい命がある。  守るべき、小さな命が……。  不思議な感覚が生まれた。  診断が下りてエコーを見るまで不安があったのに、今はその不安が薄れ、お腹の中の子供が元気に大きくなっていくことを願っている。 今、この子を守ってあげられるのは、今は僕だけど、家に帰ったら晴人さんに話してみよう。  まだ感じることのないはずの子供の心音が、瑞稀の体の中で響いているようだ。 この子を守ってあげられるのは、今は僕だけだけど、家に帰ったら晴人さんに話してみよう。  どんな結果が出るかわからない。  だが確かなことは、どんなことがあっても、この小さな命は守っていくということだった。  点滴のおかげか、つわりの症状も良くなってきたので、瑞稀は仕事に行くことにし、子供のことは晴人以外、誰にも言わないことにした。  瑞稀が店に着いたのは、店がオープンして30分過ぎたころ。 急いで用意をしないと!  瑞稀は急いで服を着替え、裏方からカウンターの中に入ろうとした時、オーナーと奈子の話し声が聞こえた。 今は奈子さんだけかな?  瑞稀がまた一歩カウンターに近づくと、 「この前、山崎先生の親友って人来てて、私、立ち聞きするつもりはなかったんだけど、山崎先生と瑞稀くんの関係で聞いちゃいけないこと聞いちゃったの……。その話しがあまりにも衝撃すぎて、私、どうしたらいいかわからなくて……。マスター、アドバイスがほしいんだけど、聞いてくれる?」 聞いちゃいけない話し?  奈子の言葉に、瑞稀の足が止まる。 「どうしたの?」 「実は…」  奈子は話し出す前に、一拍おいた。 「その先輩(・・)って人が言うには、晴人さん、瑞稀くんと付き合ってること物凄く反対されてて、晴人さんとご両親、大喧嘩したんだって」 「大喧嘩か…晴人さんならしそうだな」 え……?  思いもしなかった話に、瑞稀の体は固まってしまった。 「それに今、山崎先生にお見合いの話も出てて、そのお見合いを断り続けているから、ご両親と連絡をたって実質断絶状態。このままいけば勘当ってことにもなりかねないって……」 !! 僕と付き合っていること、ご両親から反対されてる? お見合いの話が出ている? 断り続けているから、実家と断絶状態で、勘当されるかもしれない!? そんな……。  一気に絶望に突き落とされる。 僕と一緒にいることで晴人さんに迷惑がかかってる……。

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