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第54話 雪の日の出会い ②

あの人が雫くんの言う『昴くん』なんだ。  2人が一緒にパズルをする姿が、目に浮かんだ。 「あ……」  昴と目があった時、瑞稀は咄嗟に、 「お帰りなさい」  と、言っていた。   初対面なのに『お帰りなさい』は変だよね。 「あの……」  瑞稀は『こんばんは』と訂正しようとしたが、      昴は、 「ただいま」  と答えた。 『お帰りなさい』に『ただいま』 ここで『こんばんは』と言うのも変だよね。 「お疲れ様です」  瑞稀がそう言うと、昴は目を丸くし、そして頬を赤らめながら口をぱくぱくさせたので、瑞稀はクスっと笑ってしまった。 「昴くん、見て見て。さっきね千景くんと、このパズル作ったんだよ」  雫は早く昴にパズルを見せたいと、後ろ髪を引かれる昴の手をぐいぐい引っ張る。 「え、あ……そうなのか?」  昴は気もそぞろにしながら、パズルの方に連れていかれる。 雫くんもお迎え来られたし……。 「千景、雫くんもお迎え来られたし帰ろっか。先生、ありがとうございました」  千景の鞄を手に持ち、保育園のドアに手をかけると、 「あの!」  後ろから、声をかけられた。  振り返ると、瑞稀に声をかけたのは、先ほど雫を迎えにきていた昴。 「あの、外の雪、酷くなってきているので、もしよろしければ車でお送りします」  突然の昴の申し出に、瑞稀はキョトンとしてしまう。 「まだ雪もキツくなる前ですので、大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」  そう言って、保育園のドアを開けると、ビューっと雪の混ざった風が室内に入ってきた。 「外は暗いですし……。あの、すぐそばに車を待たせているので、送らせてください」  昴は必死に言い、 「ママ、僕、雫くんと一緒に帰りたい」  と千景まで言い出す始末。 「それじゃあ、お言葉に甘えて……お願いします」  瑞稀は昴の申し出を受け取った。

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