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勘違い

<side月坂蓮> 「あの……このベルって……どこまで、聞こえてるんですか?」 「どこまで? どういう意味だ?」 僕の言葉にルーファスさんは本当に意味がわからないといった表情を見せた。 うーん、なんて言ったら伝わるかな? 「その、ルーファスさんがベルを鳴らすと……すぐにクリフさんが部屋にこられますよね?」 「ああ、そうだな。そのためのベルだからな」 「その……こんなちっちゃな音も、外に筒抜けってことなのかなって……ってことは、僕の……その、声も外に聞こえてるのかなって、思って……」 もしかしたら今、こうして話している声も外にいる騎士さんやクリフさんに聞こえてるんじゃないかと思ったら、恥ずかしくてどんどん声が小さくなってしまう。 見れば、さっきまで不可解な表情を浮かべていたルーファスさんが笑っている。 「ああ、なるほど。そういうことか。私がきちんと説明していなかったから勘違いさせていたのだな。レンを不安にさせてすまない」 「えっ? 勘違い? それはどういう意味、ですか……?」 「ふふっ。レン、心配しなくていい。このベルの音を聞いてクリフが部屋にきているわけではないんだ。このベルを鳴らすと、クリフの胸につけているバッチが震えて知らせるようになっているんだよ」 「じゃあ、僕の声は外には……」 「もちろん一ミリも聞こえていないよ。この部屋は完全防音だから、どこで話しても外に漏れ聞こえることはない。扉の前で警備している騎士たちにも一切聞こえていないよ。まぁ、訓練を積んだ騎士だからもし、この部屋に賊が現れた時にはその殺気でいつもと違う気配を感じ取ることはできるがな」 「気配……ああ……そう、なんだぁ……」 ルーファスさんの言葉に安堵のため息が漏れる。 「レンはそれが心配だったのか?」 「だって……恥ずかしいから」 「もしかして、後孔を拡げるのが風呂場がいいと言ったのも?」 「……ルーファスさん以外の人に、声が聞かれたら恥ずかしいなって……」 恥ずかしさに震えながら頷くと、ぎゅっとルーファスさんの胸に抱かれた。 「レン……それは私は特別だということだな?」 嬉しそうな声でそう尋ねられて僕はルーファスさんの腕の中で頷くと、 「ああ、なんて幸せなんだろうな」 とさらにぎゅっと抱きしめられた。 「レン……其方の声も何もかも全て私だけのものだ。他の誰にも与えたりはしないよ」 「じゃあ、ルーファスさんの声も……何もかも僕のものってことですよね?」 「ああ、そうだ。嬉しいか?」 そう問われて考えることもなく声が出た。 「はい。僕だけのルーファスさん……嬉しいです」 背中に回した手でぎゅっと抱きつくと、ルーファスさんは僕の耳元で 「レン……愛してるよ」 と言ってくれた。 こんな幸せな場面なのに『きゅるるっ』と我慢できないお腹がまた鳴り出した。 「ふふっ。レンの腹は限界に近いようだな。すぐに食べさせてやらないと」 そう言って、抱きしめていた腕を離し僕を見た瞬間、 「――っ!!!」 と息を呑んだ。 「??? ルー、ファスさん? どうしたんですか?」 急に動きの止まったルーファスさんにびっくりして声をかけると、突然ルーファスさんの鼻からツーッと赤いものが垂れてきた。 「わぁっ!! ルーファスさんっ!! 鼻血! 鼻血が出てるっ!!」 慌てて目に入ったふわふわのタオルをルーファスさんの鼻に当てようと引っ張った瞬間、自分の肩からするりとタオルが落ち、そのまま半裸になってしまっていた。 「わっ!!」 露わになってしまった胸を隠そうとタオルを引っ張ると今度は自分のささやかなモノが見えてしまう。 「――っ!!!!!」 それを見てさらにルーファスさんの鼻血が勢いを増し、鼻に当てていたタオルがどんどん血に染まっていく。 「わぁーっ!!! どうしようっ!!」 ルーファスさんの血の量に焦った僕は慌ててベッド脇に置いてあったベルを力一杯鳴らした。 すると、ドンドンドン!! とものすごい勢いで扉が叩かれたかと思うと、 「ルーファスさまっ! レンさまがどうなされたのですかっ???」 と慌てふためいた様子でクリフさんが寝室に飛び込んできた。 <sideルーファス> レンの質問がまさかベルのことだとは思わなかった。 確かにこの小さなベルを鳴らすとクリフが飛んでくるのだから、そう思っても無理はない。 自分の嬌声が外に漏れ聞こえていると心配して、後孔のマッサージを寝室ではなく風呂でと言っていたレンのいじらしさも可愛かったし、それに何より私以外には聞かれたくないと思ってくれたのも嬉しかった。 お互いに愛を確認したところでレンの可愛い腹が鳴って、食事を摂らせようと体を離した時、私の目に飛び込んできたのはレンの可愛らしい裸だった。 胸の赤い尖りも、果実のような可愛らしいモノもおくるみの隙間から見えてしまっている。 寝室で不意に見えたその美しい裸体に目が釘付けになり、一瞬にして興奮し滾った熱が鼻血となって噴き出してしまった。 私が突然鼻血を出して驚いたレンが自分の身体を包んでいたおくるみで私の鼻血を拭ってくれようとしたのだが、そのせいで私の眼前にレンの綺麗な裸体が晒されてしまった。 そのあまりにも美しい身体に興奮が止まらなくなってしまい、鼻血は止まるどころかどんどん勢いを増していく。 レンがあてがってくれたタオルはどんどん血に染まり、パニックになってしまったレンはクリフを呼ぶためのベルを思いっきり鳴らしてしまったのだ。 あれはベルの大きさによってバッジが受け取る振動も増す。 緊急事態であればあるほどベルを激しく振りバッジへの振動も増すのだ。 それを知らないレンが激しくベルを鳴らしたために、クリフはとんでもないことがこの部屋で起こったのだと思い、扉を蹴破るくらいの勢いで部屋に飛び込んできたのだ。 寝室の扉がガチャリとなった時に我に帰った私は、一瞬で今の状況を整理し、裸になっているレンの身体を布団で覆い隠した。 「ルーファスさまっ! レンさまがどうなされたのですかっ???」 と寝室に入ってきたクリフが目にしたのは、布団にくるまり顔だけ出しているレンと、血塗れになったレンのおくるみを手にしている私の姿だった。 この時クリフが、私が無理やりレンを襲いレンを血塗れにしたと勘違いしているとは、その時の私には考える余裕もなかった。

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