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笑顔溢れる
<sideルーファス>
「それでは婚礼の儀を始めましょう」
神殿長の言葉にレンはすぐに両親から離れ、私の元へとやってきた。
その顔はなんの憂いも無くなったというような実に晴れやかな笑顔だった。
神殿長の傍らにレンの両親が並び、厳かながらも柔らかな雰囲気が漂う。
神殿長が神から賜わった祝いの言葉を読み上げた後で、
「陛下、レンさまに誓いの言葉をお願いいたします。続けて、レンさまも陛下に誓いの言葉をお願いいたします」
と笑顔を向けた。
神殿長の言葉にレンが嬉しそうな表情で私と向かい合う。
私もこの上なく嬉しいが、これまでひたすら待ち望んできた瞬間だからか、緊張が隠せない。
それでもここで失敗をするわけにはいかない。
私は大きく深呼吸をして、レンの前に片膝をついて左手を差し出した。
「レン……私、ルーファス・フォン・リスティアは全身全霊をかけ、生涯レンだけを愛し続けることをここに誓う」
レンは私の差し出した左手にそっと手を乗せると、
「僕はルーファスさんが命をかけて僕の幸せを願ってくれたことを一生忘れません。今度は僕の番です。僕が一生ルーファスさんを幸せにします。だからずっとそばにいてください」
と涙を浮かべながらにこやかに微笑んだ。
「レン……ありがとう」
幸せそうに微笑むレンの左手をとり、指輪にそっと口づけを贈ると指輪がキラキラと輝き始めた。
「おおっ!!」
真っ白な神殿に宝石の色が映るほど、神殿中が赤、白、青の眩い光に包まれた。
しばらく光を放ち続け、ようやく光がおさまったかと思った瞬間、目に飛び込んできたのは驚きの光景だった。
「レン……実に美しい……」
「ルーファスさんも」
我々が着ていた真っ白な婚礼衣装が先ほどの美しい光を吸い込んだかのように色鮮やかな衣装に変化していたのだ。
「神殿長……これは一体?」
「お二人の強い愛が神に認められたという証でございます」
その言葉にレンは嬉しそうに笑った。
「これでお二人は神によって正式に夫夫と認められました。末長くお幸せにお過ごしになることを祈っております」
神殿長が深々と頭を下げると、傍らでレンの両親が号泣しているのが目に入った。
「レン、おいで」
レンの手を取り、ゆっくりと両親の元へ向かう。
「蓮、おめでとう。国王さま……どうか蓮を末長くよろしくお願いいたします」
涙を流しながら頭を下げるレンの父上に
「どうか顔をあげてください。レンのご両親ならば、私にとっても両親と同じ。私の実の両親はすでに他界致しましたので、お二人を本当の両親だと思って接してもよろしいですか?」
と声をかけると、
「そんな……もったいない」
と謙虚な答えを返してきた。
「我々の幸せのために何もわからない世界に飛び込んできてくださったのです。これからの生活はどうかご心配なきように」
「いえ、私たちは遊んで暮らす気など毛頭ございません。元気な身体があるのです。どうか働かせてください」
レンの父上の言葉に私も、そして神殿長も驚いた。
普通なら、自分の子が王妃になればこれからの生活が安泰だと喜ぶことだろう。
それが働きたいと言い出すとは……。
やはり心美しいレンの両親なのだな。
「それではこれからのことは、おいおい考えることにしてまずはゆっくりとお身体を休ませてください。まだこちらにきたばかりで慣れないでしょうから」
「はい。ありがとうございます」
母上と嬉しそうに話しているレンに声をかけ、揃って神殿から外に出た。
色鮮やかな婚礼衣装を身につけたまま、支度部屋から出るとレナルドは私たちの姿を見て驚き、そして、後ろからついてきたレンの両親を見てもう一度驚いた。
「えっ? あ、あの……陛下。この方々は?」
「レンの両親だ。今日からこの世界で一緒に暮らすことになった」
「な――っ? えっ? はっ?」
目を丸くして驚くレナルドを見て、私もレンも、そしてレンの両親も笑いが堪えきれず、楽しい声が響き渡った。
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