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『どちらかが十年分の記憶を忘れる薬』を飲まないと出られない部屋(7/7)

*** 「う、ん、んんんっ! ルス……、ルスぅ、ぅあっ、んっ、また……ああぁっ!」 俺の上であられもなく身を捩る男の腰を両手で掴んで、ゆっくりその内を掻き回す。 達したばかりのレイの内側は熱くうねって、懸命に俺にしがみついてくる。 「またイッたのか?」 囁けば、レイは真っ赤な頬で悔しげに眉を歪めた。 思わず上がってしまう口角をそのままに、俺はベッドのサイドボードに背を預けるようにして体を起こす。 こいつの恥らいながらの辿々しい奉仕にも中々くるものはあるが、そろそろ俺の手で存分に可愛がってやりたい。 レイの記憶の中では初めてのはずの吐精から、もう何度目か。 俺がレイの内側へ欲を放てば、レイは俺のそれを溢すまいとするかのように、毎回健気に内側を絞り込んだ。 次第にどろどろに蕩けてゆくレイの内は、俺を激しく煽る。 些細な刺激にも敏感に反応する様は、もっともっとと求められているようで、俺は誘われるままに際限なくそこへと精を注ぎ込んでしまう。 「ル、ス……っ、ルス、も、もう……っ、や……っ」 涙に濡れた顔で、懇願するような声を漏らすレイ。 止めてくれと訴えているはずのそれが、甘くねだっているようにしか聞こえない俺は相当マズイな。 「なんだ、もうおしまいか?」 膝の上に抱き上げたレイの腰を引き寄せて、レイの好きなところへ強く押し当てると、レイは青い瞳を見開いて喉を逸らした。 「あっ! ぁあああっ!!」 押し当てたまま、激しく揺さぶる。 「やっ、やめ、ルス……っ、んんんんっ、また、あ、……っ、すご、ぅ、凄い、こん、な、あああっ!」 レイの腕が回された俺の背に、ジリッと痛みが走る。 頑ななまでに俺を傷つけまいとするレイは、俺に爪を立てる事が滅多にない。 よほど前後不覚になっているようだ。 俺はヒリリとした小さな痛みに喜びを感じながらも、快感の渦に囚われてビクビクと跳ねる美しい男を見つめた。 艶やかに色付いた紅頬。すっと流れるような眉毛は、今は切なげに寄せられて、伏せられた長い金の睫毛の下では青い宝石が蕩けている。 詰まる息の合間から俺の名を繰り返し呼ぶ薄い唇は、俺に繰り返し応えて赤く腫れている。 「レイ、お前は本当に可愛いな……」 囁けば、とろりと蕩けた瞳が嬉しそうに俺を見つめ返した。 まだうねり続けるレイの内側で、俺の物に熱が集まる。 いや、これ以上はマズイだろう。 「今日はここまでにしておこう。でないとお前を壊してしまいそうだ」 俺の言葉に、レイがふにゃと表情を崩した。 「お、れ……ルスに、なら、壊されてもいーよ……?」 心臓を鷲掴みにされて、息が止まる。 良くない。 良くはないだろう。 そんな事を軽率に口にするな。 「あまり可愛い事を言うんじゃない。歯止めが効かなくなるだろう」 青い瞳がゆっくりと瞬いて、へら、と人懐こい笑顔が浮かぶ。 やはり反応が鈍いな。 これ以上は、たとえこいつに誘われても、断固として断らなくてはな。 俺はこいつへの誓いを、……二度と酷く抱き潰さないと誓った日の事を思いながら、意思を強固にする。 「俺、ルスが大好きだ……。ルスのためなら、なんだってするよ……」 「気持ちは有難いが、お前はもう少し自分を大切にしてくれ」 レイをなるべく優しく胸に抱く。 俺が触れるだけで、ぴくりと揺れる身体が愛しくてたまらない。 「俺……絶対、ルスを幸せにするから……な……」 「俺はお前さえいてくれれば、幸せだよ」 レイの頭の、傷の無い部分を撫でながら囁けば、レイは俺の胸へと体重を預けた。 「へへ……、そか……。良かっ――……」 不意に途切れた言葉の後には、静かな寝息が続いた。 あまりに急に色々ありすぎて、精神に負荷がかかりすぎたのかも知れんな。 そっとベッドに下ろしたレイは、涙の跡が残った頬で、それでも幸せそうな寝顔をしていた。 ああ、そういえばあの日も、こんな風に寝てしまったレイの後始末をしてやったな……。 と、そこまで思ってからハッとする。 ……思い出した。 やっと、……思い出せた。 もうあの日の記憶が戻ることはないだろうと思っていたのに……。 俺は、あの日の出来事を丁寧に思い返しながら、俺に二度も初めてを捧げてくれた男にそっと口付ける。 「……ん……」 眠ったままの男から甘い声が小さく返ってきて、俺は口元を緩ませた。 これから内側をたっぷり洗ってやろう。 レイならきっと、眠っていても俺を喜ばせてくれそうだ。

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