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包家の食卓③
恭安楽が持ち帰った北京の伝統菓子に、手作りの洋菓子、そして美味しいお茶を楽しんでいた時だった。
「そろそろ…じゃ、ないですか」
そう言って文維がソファの正面にあるテレビをつけた。
「もうすぐ、お父さまのインタビュー番組が始まるわ。それを見ながら、お父さまが作っておいてくださったお料理をいただきましょうよ」
今日、文維や煜瑾たちが包家に集まったのは、清明節だからというだけではなく、恭安楽の最愛の夫で文維の父である包伯言 教授がテレビに出演するからだった。
ウキウキした様子の恭安楽が言うと、文維が苦笑しながら立ち上がった。
「じゃあ、温めてきます」
「私もお手伝いを!」
慌てて煜瑾が立ち上がろうとすると、包夫人が引き留めた。
「ダメよ、煜瑾ちゃん!お父さまのインタビューを見逃したらどうするの?」
「で、でも…」
最愛の文維と離れるのが耐え難い煜瑾だったが、大好きなお母さまの言葉に、煜瑾はどうしたものかと戸惑って動けなくなる。
「いいよ、煜瑾。文維の手伝いはボクがするから、叔母さまと煜瑾は座っててよ」
誰よりも心の美しい親友 が大好きな小敏は、彼の代わりに立ち上がった。
「でも…」
「いいから、いいから。煜瑾は、叔母さまのお相手を頼むよ」
そう言った小敏に、煜瑾も申し訳なさそうにしながらも、ホッとした様子で恭安楽の隣に座り直した。
「おとうさまのインタビューは、どういう内容なのですか?」
包夫人と2人になった煜瑾は、素直に気持ちを切り替えて、お母さまに気になっていたことを質問した。
「ええ。お父さまが大学の次期学科主任に決まったので、今注目の研究者の紹介ということで、割と軽めの番組でのインタビューらしいのよ」
「軽め?」
なんとなく嬉しそうなお母さまの説明に、煜瑾は好奇心いっぱいに、その印象的な黒い瞳をキラキラと輝かせた。
「これまでのお父さまのテレビインタビューといえば、専門的な内容の番組ばかりだったのだけど…。今回は女性司会者の、ちょっとした娯楽番組なのよ」
そういう包夫人はテレビ画面をチラチラ確認しながら、煜瑾にお菓子を勧めたり、自身もお茶を飲んだりしている。期待にソワソワしているのが、誰の目にも分かる。
以前の包伯言のテレビ出演は専門的な教養番組ばかりで、恭安楽は少し退屈だと思っていた。しかし、今回は主婦にも人気のある女性司会者のインタビュー番組なのだ。恭安楽自身も楽しみにしているが、主婦仲間も注目しているとあって、少し自慢に思っていた。
「私はお父さまのテレビ出演を拝見するのは初めてです。とっても楽しみにしていたのです」
ワクワクした気持ちを抑えきれない煜瑾は、お菓子を食べる手を止めて、お母さまに話しかけた。
「伯言ってば、案外テレビ映りがいいのよ」
少女のように茶目っ気たっぷりにクスクス笑って恭安楽は言った。
その時、賑やかな音楽と共に番組が始まった。
最初は人気の女性司会者が、今日の話題について案内をしながら、番組アシスタントたちの紹介をしている。
「文維~、小敏~。番組が始まったわよ~」
画面から視線を外さず、恭安楽が大きな声でキッチンで活躍中の息子たちに声を掛けた。
その時になって煜瑾は、キッチンの方から自分の大好きな紅焼肉の甘辛い匂いがするのに気付いた。お父さまが、自分の好物を覚えていて、わざわざ用意してくださったのだと思い至り、嬉しくて胸が熱くなった。
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