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Dr.Hooのサイコロジカルイリュージョン③

 テレビ画面は、再びDr.Hooこと、胡双のチャーミングな笑顔に切り替わった。 「面白いわよね、催眠術って。誰でも言うことを聞かせることができるのでしょう?」  お母さまも、大好きな包教授の手料理を楽しみながら、幸せそうに言った。  そんな満足そうな愛妻の様子に、包教授もまた幸せそうだった。 「じゃあさ、欲しい物を買ってもらうとか、気に入らないヤツを代わりに殴ってもらうとかさ…」  いたずら好きの小敏らしい発言を、文維は笑って否定した。 「催眠術は、そんな都合の良いものじゃない。どんなに強く催眠術をかけようとしても、本人がかかりたくないと思えば無理だし、かかったとしても、本人がやりたくないことはさせられないよ」 「え~、でも、みんなの前で恥ずかしいこととかさせられてるじゃん!」  そう言って小敏はちゅっと唇を尖らせるが、そんな顔が自分を可愛く見せると知っている、小悪魔な羽小敏である。 「これは、どこかでお遊びだって分かっているから抵抗なく受け入れるんだよ。観客から選ぶにしても、サービス精神がありそうな人を選ぶのがポイントだしね」  スラスラと自分の専門分野を語る文維だが、決して嫌味がなく、煜瑾はウットリと陶酔したような熱い視線で見つめていた。 「だったら、誰かを殺してくれとか、自殺しろとかは、命令できないのか~」  なぜか不満そうに小敏が言うと、ハッと驚いた様子で煜瑾は小敏を振り返った。 「そ、そんなことを催眠術でしようと思ったのですか!」  どこまでも清純で、天使のような煜瑾は、小敏が口にしたような邪悪なことが受け入れられなかった。 「いや、別にしたいわけじゃなくて…。そういうことが出来たら面白いな~って」 「ダメです!人の命にかかわることを『面白い』とか言っちゃいけません!」  真面目な煜瑾は、親友の小敏を思わず叱りつけた。真剣な煜瑾の目つきに、小敏もこれ以上ふざけてはいけないと、すぐに気付いた。 「ゴメン…。そういうつもりじゃなくて…」  タジタジとなった小敏は、救いを求めるように文維を見た。 「煜瑾の言うことが正しいよ、小敏。人の命を軽んじるような冗談は良くない」 「は~い。ごめんなさい」  すっかり萎れた小敏だったが、その姿に反省を認め、煜瑾が癒しの笑顔を浮かべた。 「第一、文維がそんな催眠術を使うはずがありませんよ」  愛する人を心から信じる煜瑾は、優雅にそう言って文維を見つめたまま頷いた。その高貴さに、包夫妻も穏やかな気持ちになった。 「殺人や自殺など、人間が本能的に拒絶反応を抱くようなことは、どんな催眠術を使っても実行させることは出来ませんよ」  文維がそう言って締めくくると、ポツリと包夫人が呟いた。 「催眠術に掛けられたとしても、やりたくないことは、しなくていいのね」 「そうですよ、お母さま。大勢の観客の前で恥ずかしいことをさせられる心配は無用です」  聡明な息子にからかわれ、包夫人はパッと目の色を変えた。 「私が選ばれて、ステージに上がるなんてこと、あるかしら!」  その目は、少女のように期待にキラキラ輝いている。確かに、年齢不詳で若々しく、愛らしささえある上にスラリとした恭安楽は、ステージ映えする見た目ではある。 「おかあさまが、ステージに?わ~ステキですね~」  素直な煜瑾だけが同じようにキラキラした瞳で、お母さまと共感している。包教授はニコニコとしているが相変わらず無口で、小敏はクツクツ笑いながら肩を震わせているし、文維は呆れたように視線を外した。

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