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第10章:誰を信じるべきか、僕にはわからない (俊介視点)
ここ最近、恵斗と衆哉が――なんだか妙だ。
どこかピリついていて、視線が合ってもすぐ逸らされる。
自分のせいだってわかってる。だけど、どうすればいいのかが分からない。
そんな中で、唯一“穏やか”だったのが、勇気だった。
「俊介くん、大丈夫? 最近、顔色よくないよ」
「……ありがと。でも、勇気の前ではちゃんと笑ってるつもりなんだけどな」
「うん、でも……僕にはわかるよ。俊介くん、優しいから、誰にも本音言えてないんでしょ?」
その言葉に、少しだけ胸が苦しくなった。
(本当のことなんて、言えるわけないよ)
•
そんなある日、衆哉に呼び止められた。
放課後、人気のない廊下の突き当たり。
ふざけるでもなく、いつもの調子でもなく――衆哉の目は、真剣だった。
「俊介、……勇気のことだけどさ」
「え?」
「――あいつ、なんかおかしい。……お前に、近づきすぎてる」
俊介は言葉を失った。
「いや、悪いやつじゃないのは分かってる。表面上は、ちゃんといい子してる。
でも……お前の周りの人間に、“刺してくる”ようなこと言ってんだよ」
「……どういうこと?」
「恵斗にも、俺にも、言葉にしづらいけど――“圧”みたいなものかけてきた。
俺らが俊介に近づくのが気に入らないって、はっきり伝えてきてるんだ」
俊介は、信じられなかった。
勇気がそんなことを?
「勇気は……そんなふうには見えない」
「だから怖いんだよ。……あいつ、“そう見えないように”やってんだ。
笑いながら、優しそうな声で、こっちの神経を削ってくる」
俊介の胸に、静かに“疑い”が芽を出す。
(勇気が……俺を守ろうとしてる? それとも……囲い込もうとしてる?)
でも、どうしても――
“あの日に差し出してくれた、小さな手”を裏切ることができなかった。
•
「……俺は、お前のことが心配だから言ってる。
信じるかどうかは、俊介に任せるけど」
衆哉はそれだけ言って、去っていった。
俊介は、廊下に一人残されて、静かに目を閉じた。
(俺が本当に守られてるのは、誰からなんだろう)
心の中に、勇気の笑顔と、衆哉の真剣な目が、交差していた。
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