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第14章:愛されるって、こんなに怖いことだったっけ (俊介視点)

誰かを選ばなきゃいけない その現実から逃げていた僕を、まるで見抜いたように―― 3人が、同時に近づいてきた。 • 最初は恵斗だった。 「今日、帰り――一緒に帰ろ? ……あいつらには、内緒でさ」 笑いながら言ったその声に、かすかな焦りが混じっていた。 隣を歩く距離が、いつもより近い。 指先が僕の手の甲に、何度も触れそうになって―― 「俊介、やっぱり俺さ、  誰かを“ちゃんと”好きになったの、初めてだったんだって思った」 不器用で真面目で、ずっと一緒にいてくれた人。 でも―― (今、その言葉すらも、怖い) • 次に来たのは衆哉だった。 「なあ俊介、お前、最近元気ないな。……ほら、今日はつき合えって。遊び行こうぜ」 明るくて、いつもは軽口ばっかり叩いてるくせに。 この日は、妙に真面目だった。 「笑ってるお前が好きなんだよ、俺は。  だけど、最近のお前、見てて……つらい」 (そんなふうに“気づかないで”) (優しさも、気遣いも――今は、刃物みたいに痛い) • そして――勇気。 「俊介くん……最近、少し距離がある気がするんだ。僕、何かした?」 首を傾げながら、僕の瞳をじっと見つめる。 その目が、怖いほどに深かった。 「でもね、僕は――俊介くんが何も言わなくても、ちゃんと気づいてあげられるよ。  だから……僕だけ見てくれてたら、それでいいんだ」 • 3人の言葉。優しさ。まっすぐな想い。 どれも、本物だった。 本物すぎて、僕の中の空気を奪っていった。 (ごめん、みんな。こんなふうにされると、僕……) 息が、苦しい。 鼓動が早くなって、足元が揺らぐ。 「――選ばなきゃいけない」 わかってるのに。 「誰も選びたくない」 そう叫ぶ心が、まだここにある。 でもそれって―― 「誰のことも、ちゃんと愛せてない」ってことなんじゃないか? • その夜、僕は夢を見た。 手を伸ばすと、3人ともが僕を見て笑ってる。 でも、僕が誰か一人の手を握った瞬間―― 残りの2人の笑顔が、凍りついて崩れていく。 (怖い……) 愛されることが、 誰かに必要とされることが――こんなに怖いなんて、知らなかった。

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