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第12話 やめろって言われても ※R-18
ゆっくりと、鎖骨に唇を落とし、首筋をなぞるようにキスを重ねていく。
そこから胸元へ――まるで余韻を惜しむように、ひとつひとつ丁寧に。
「……柏木さん」
名前を呼ぶと、息を呑む音が返ってくる。
柏木さんの胸がゆっくり上下するたび、密着した体がかすかに擦れ合う。
肌に触れている手のひらには、しっとりとした汗の気配。
胸の先端にそっと舌を這わせながら、反対側を指先でやわらかく摘む。
その瞬間、柏木さんの呼吸がはっきりと乱れた。
「あっ……、や……」
かすれた声が耳に触れる。“やめろ”って、たぶんそう言った。
けど、その手は弱々しく俺の腕に触れただけで、押し返す力はもうどこにもなかった。
――ここまできたら、もう勝負はついてる。
「柏木さんって……こんなに、感じやすかったんですね」
耳元に唇を寄せて、吐息をかけるように囁いてやると、柏木さんの肩がびくっと跳ねた。
……かわいい。
ちょっと意地悪したくなって、胸の飾りにそっと歯を立てて軽く噛む。
「……んっ……あぁっ……!」
震えた声。必死に我慢しようとしてるのに、体が正直すぎる。
「……ここ、そんなに感じちゃう場所なんですか?」
わざと舌先でなぞるように、何度も優しく、でも執拗に舐めてみせる。
「っ……ん、……やめっ……ほんまに……っ」
「やめてって言ってるくせに……腰、引いてないですよ。むしろ押しつけてきてる気がするんですけど?」
からかうように言えば、柏木さんはビクリと反応してすぐに睨むような目を向けてきた。
「……その顔、めちゃくちゃ可愛い」
「ふざけんな……おまえ、誰にそんな口きいてんだ」
「柏木さんにだけ、ですよ」
軽く笑って、頬に指を這わせる。
「俺、他の人にはこんなこと言わないし、しないです。……全部、柏木さんだけ」
その言葉に、柏木さんの視線が少し揺れる。
ほんの少し、唇がかすかに震えて――
その小さな揺らぎが、たまらなく愛しく思えた。
「ねぇ、柏木さん。俺にこうやって触られて、感じて……頭の中、今、どうなってますか?」
「……黙れって……」
かすれるような声で、そう呟かれたけど――それはもう、拒絶には聞こえなかった。
「……じゃあ代わりに、俺が言ってあげましょうか?」
唇をすぐ耳元まで近づけ、甘く囁く。
「たとえば、“やめてほしいはずなのに、気持ちよくてやばい”……とか」
指先が肌の上を滑るたびに、押し殺した吐息が伝わってくる。
「さっきからずっと息荒くなってるし。もしかして、俺の声で、下、反応してます?」
「っ……!」
反応を探るように、唇で首筋をなぞりながら問いかけると――
柏木さんの手が、震えるようにシーツをぎゅっと握った。
「ねぇ……言ってくださいよ。俺の声で、どこが気持ちよくなったか」
そう言って耳の穴にそっと舌先を這わせると、びくん、と跳ねる身体。
「……あ、……あっ、やめ……っ……!」
「やめません。柏木さんがちゃんと言ってくれるまで」
吐息混じりに囁くたび、柏木さんの手がシーツをぎゅっと握りしめていく。
「……っ……、おまえの……その声で……っ」
「うん、声で?」
「……下、……熱くなった……っ、から、もう黙れって……」
「うわ……かわいすぎ……」
息をのんだ。あの柏木さんの口から、そんな言葉が出るなんて。嬉しすぎて、ニヤけが止まらない。
「……柏木さん、そういうのほんと俺、たまらないです」
「もう黙れ、バカ……っ」
そう言いながら、柏木さんの耳の先は真っ赤だった。腰からゆっくり、太腿の内側へ。指先でなぞるたび、柏木さんの身体がピクリと跳ねる。
「あっ……」
かすかな声が漏れたのと同時に、柏木さんの手を取って、枕の横へとそっと誘導する。
胸元に音を立ててキスして、首筋に唇を押しつけ、少し強めに吸う。
さらに歯を立てて、甘噛みしてやるとーー
「いッ……!」
柏木さんが短く叫んで、涙ぐんだ目でこっちを睨んでくる。
けど、その顔がまた、たまらない。
「ね、柏木さんは男とエッチした事あります?」
わざと軽い口調で聞いてみると、間髪入れずに怒ったような声が返ってくる。
「っ、あるわけないやろ……! そんなん……」
「じゃあ"初めて"は俺にくださいよ」
「……は?」
目を見開いて固まった柏木さんに、悪戯っぽく笑いながら耳元で囁く。
「……柏木さんの中に入りたいです」
「な、っ……待っ……」
言い終える前に、指先で柏木さんの後孔に触れる。
「ヒクヒクってして、もう俺の指、入っちゃいますよ?」
「……っ、ああ、……やめ……」
俺はゆっくりと指を挿れていく。内壁を指の腹でぐり、と擦ると、柏木さんは息を吸った。
「あっ、あ……」
「気持ちいいトコどこですか?ここ?」
俺の問いかけに首を左右に振って耐えてて……そんな反応がマジでかわいい。
時々いい所を刺激すれば、堪らない様子で腰を捩って逃げようとする。
でも逃げ場なんてない。俺の腕の中で、息を切らしてるだけ。
「あ、ぅっ………それ、だめ……」
「柏木さん、かわいい」
耳のすぐそばで囁いてやると、またびくっと肩が跳ねる。柏木さんから甘くて熱い吐息が零れた。
「これ以上はやめろ……お願いやから……」
震える声でそう言った柏木さんの顔、今にも泣きそう。
「かわいいんですけど、そのお願いは聞けないかな」
そう言って指を抜き差しすると、ひっきりなしに喘ぐ柏木さん。
「っ……もう、やめろって……」
そう言いつつ、逃げようとはしない。むしろ、俺の指がイイところに触れるたび、浅く息を漏らして身体が熱を帯びていく。
「っ、あ……あぁっ……」
「……こんなに可愛い声出しておいて、"もうやめろ"は無理ありますよ?」
「う、るさい……お前が……」
潤んだ目で睨んでくるけど、その視線の奥は求める色に染まってる。
柏木さんをあらためて抱きしめたら、全身から力が抜けるのがわかる。
そのまま、引き寄せられるようにキスをした。
「……もっと、鳴かせていいですか?」
「ほんまに、おまえは……」
苦しげに言いかけたその言葉は、途中で掠れて、息に溶けて消える。
俺は理性と欲の間で、心臓がうるさいくらいに暴れてた。
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