32 / 64

第32話 甘く触れて、深く堕として ※R-18

呼吸が触れそうな距離で、澄人くんの目をじっと見つめる。 「キスしていい?」 ぽつりとそう呟くと、澄人くんが一瞬だけ目を見開いた。指でそっと頬をなぞって、その熱を確かめる。 「……蓮、」 かすかに呼ばれた名前は、不安と期待がまざった声だった。 「……するね」 言葉が終わらないうちに、唇を重ねた。 一度だけ、って思ったのに全然足りない。もう一度、今度はゆっくりと深く、澄人くんの唇を味わうように重ねた。 「ん……」 逃げかけた肩に手を添えて、距離を詰める。 首筋に顔を寄せて静かに息を吸った。少し甘い、澄人くんの匂い。たまらず耳元に口を寄せて、低く囁く。 「……キスだけなんて、ムリ」 そのまま背中に回した手をぐっと引き寄せると、澄人くんの体が俺の胸に落ちた。 汗ばんだシャツの下、背中から腰へ、ゆっくりなぞる。 「ちょっ……」 顔を覗き込むと、澄人くんは焦ったように視線を泳がせていた。 戸惑いと、少しの警戒――けれど拒絶ではない。 「……澄人くんって、こういうの、あんまり得意じゃないとか?」 少しからかうように言ってみると、澄人くんはすぐに視線を外した。 「別に、苦手とか……そういうんじゃねえし」 照れ隠しに吐き捨てるその声も、どことなく甘くて。 「……立てる?」 優しく問いかけながら、指先で顎を軽く持ち上げて、視線をこちらに戻させる。 「ん……、」 澄人くんは少しだけ眉をひそめたものの、静かに頷いた。落ち着かせるように微笑んで、肩を支えるようにしながら立たせる。 そのまま、絡めたままの手を軽く引いて、ベッドの方へと導いた。 「……ね、優しくされたい? それとも……強引なほうが好き?」 そう訊ねると、澄人くんのまつ毛がぴくりと揺れた。 「何言ってんだよ……」 言葉の端に滲むのは、確かな動揺。 何も言わず、そっと背に手を回し、ゆるやかにベッドへと倒す。 「……ちょ、まって、優しく……」 「ふふ。最初からそう言えばいいのに」 シャツのボタンに指をかけて、ひとつずつ外していく。 開いていく隙間から澄人くんの白い肌が覗くたび、視線が離せなくなる。 頬に触れ、耳元へ唇を寄せて低く囁いた。 「優しくしてあげるよ。その代わり……俺の言うこと、聞いてくれる?」 その声に、澄人くんはわずかに視線を逸らし、「……なに……」と小さく問い返してくる。 俺はわざと間を置いて、ゆっくりと言った。 「乳首、自分で触って。両方、指で摘まんでみて」 息を呑む気配。ちらと、怯えるように俺を見上げ―― 「……なんでだよ……」 そう言いながらも、拒みきれずに指先が胸元へと伸びていく。 ぎこちなく、戸惑いながらも、言われた通りに。 左右の乳首に指が触れた瞬間、その仕草に思わず喉が鳴った。 「どう? 自分で触るのって、変な気分?」 そう聞けば、澄人くんは唇を噛んで顔をそむける。 「……別に、なんも……。……わかんねぇし」 ちょっと不貞腐れたみたいな口調。 ふいにムッとした顔になったのが可笑しくて、つい口元がゆるむ。 「……教えてあげようか」 そう囁いて、澄人くんの手をそっと外す。 代わりに、俺の指先がゆっくりと胸元へと滑っていった。 「こうやって……」 柔らかく、きゅっと摘んでから、円を描くように撫でていく。 ときどき、爪をほんの少し立てて、引っかくように刺激を与えて―― 様子を探るみたいに、反応をひとつひとつ確かめながら、じっくり。 「っ、あ……っ」 びくっと身体が跳ねて、腰がわずかに浮く。 必死に抑えてるのに、声が漏れてるのがもう可愛くて、俺は堪えきれずにそっと胸元へ顔を寄せた。 「っ、ちょ……や、やめっ……!」 澄人くんが焦ったように俺の肩を押し返してくる。けど、その手にはさっきの強さがない。 その反応がたまらなくて、左の乳首に舌先で触れる。 「……っ、ん……っ」 押し殺すような声とともに、また腰が浮いた。肩に回された腕が、ぎゅっと力を込める。 「ん……っ、あ、だめ……っ」 先端をちろ、と軽く弾くたびに、澄人くんの背筋がぴくりと反応する。震える声で拒んでも、身体は正直だ。 「気持ちいいの?」 わざと低く囁くと、彼は顔をそむけながら、唇をぎゅっと噛んでる。 「……ちがう……っ、」 なんて言うけど、口元を抑えながら目を逸らしてて……必死に我慢してるのがバレバレだ。 「そっか。……じゃあ、遠慮なく続けるね」 そう言って、もう一度ゆっくり舐めあげる。 端から円を描くように、丁寧に。ときどき、ちゅっと音を立てながら吸って――。 今度は喉の奥から微かに漏れる声―― 「っ、……ん、ふ……」 声に出すまいと堪えてるけど、吐息が甘くて余計にそそる。 泣きそうな目で見上げてくる顔に、喉の奥が鳴る。 「こっちも……しよっか」 びく、と小さく震えた彼の身体を抱きとめながら、もう片方の乳首を甘噛みする。 「――んっ……!」 その直後、敏感になったところをぺろりと舐めると、澄人くんの目が潤んで、俺の方を見た。 「あっ……や……っ」 澄人くんの指先がまたシーツを掴んで、腰が、くい、と俺の方に近づいてきた。 その無意識の仕草が、俺の理性を静かにじわじわと溶かしていく――。 「……ほんと可愛いね」 もっと見たくなる、もっと欲しくなる。やらしく、俺を求めてほしい。

ともだちにシェアしよう!