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第58話 ちゃんとおねだりしてください ※R-18
「……じゃあ、覚悟してくださいね」
そう言って触れた瞬間から、柏木さんの身体はまた反応しはじめてた。
腕の中でぐったりしながらも、吐息だけはどんどん熱を帯びていく。
「もう力入ってないよ、柏木さん」
耳にかかるように低く囁くと、ぴくっと肩が跳ねる。
俺は密着してた柏木さんの背中から少し距離を取る。
「ちょっと待ってください」
「な、なに……」
柏木さんが振り返る。困惑と欲と、途切れた快楽の余韻で目が潤んでる。
俺は笑って、耳元にもう一度だけ囁いた。
「ちゃんと“おねだり”できるまで、おあずけです」
柏木さんの肩がまた震えた。顔を伏せたまま唇を噛んでる。
「……おまえ、」
「あ、柏木さんって待つの苦手でしたっけ」
「バカ、調子に乗んな……」
かすれた声でそう返した柏木さんの頬は、熱く火照っていて。
どこをどう見ても、あの完璧主義のクールな柏木澄人じゃなかった。
「ほら、おねだりは……?」
柏木さんの肩を抱いたまま、耳元に口を寄せて、そっと囁く。
「っ……誰が……」
強がる声が妙にかすれてるのが可笑しくて、俺は肩をすくめた。
「そーゆーとこも好きですけど。今は素直になってくださいよ」
「……っ、うるさい……っ」
シーツをぎゅっと掴むその手が少し震えてた。
俺はそのまま、ゆっくり柏木さんの後ろにモノを擦り付ける。
「ほら、いいとこ擦って、奥いっぱい突いて……イかせて欲しいんですよね?」
わざとやらしく言ったら、柏木さんの腰が動いちゃってる。
「ばか、いじわる……すんな」
「意地悪じゃないですよ。柏木さんに、ちゃんと求めてほしかっただけです。でも、要らないならいいですよ」
そう言って立ち上がろうとしたときだった。
腕を、ぎゅっと掴まれた。
「……ま、っ……待て……っ」
その声。さっきまでの強がったトーンと違ってかすれてて弱くて、でも明らかに欲しがってた。
俺はそのまま、また柏木さんの前に膝をついて視線を合わせた。
「なんですか?」
しばらくの沈黙のあと、彼は唇を噛んで小さくしぼるように言った。
「……お願い、する……から……」
「ちゃんと言ってください」
わざと軽く言ったら、柏木さんは目を逸らして、モゴモゴ唇を動かした。
「……樹が……ほしい……」
ぼそぼそって、聞こえるか聞こえないかの声。でも、ちゃんと伝わった。
その瞬間、俺の中でスイッチが壊れたみたいになった。
「……やば、柏木さん、ほんっと最高」
興奮と照れで真っ赤になってる肩にそっとキスを落とすと、身体がびくって反応した。
「おねだり、バッチリでした。えっちな柏木さん、ほんと大好き」
「……おまえが言わせたんやろ……」
ぷいっと顔をそむけて言い返す声も、全部甘く響いた。
「でも言ったのは柏木さん。だから、いっぱい気持ちよくしてあげますね」
後ろから身体を寄せて腰を支えながら、俺の先をあてがう。
少しだけ力を入れて押し当てると、すぐに柔らかく中がひらいていった。
「んっ……ぁ、っ……!」
ゆっくり、そして深く。
ぐっと奥に差し込んで角度を変えて、その一点を押し上げる。
「っ……ああっ……!」
「ここが好きなんですよね?」
わざとリズムを変えて、抜き差しを浅く深く繰り返す。
「あっ……ぁ、は、あっ、……あっ!」
思いっきり腰を打ちつけると柏木さんの腰がびくびく跳ねた。
「っ……ま、待っ、無理……ッ、ああっ!!」
叫ぶように言ってるのに、身体の方はどんどん奥を求めて動いてる。
「無理って言ってるわりに、そんなに締めつけて……。ほんとに、素直じゃないですね」
そう囁くと、柏木さんの背がびくん、と震えた。
逃げられないように、腰を片手で支えて何回も責め続ける。
柏木さんはもうぐちゃぐちゃで、喉の奥から甘い声が何度も零れる。
「っあ、……あ、んっ、あっ……!」
もはや、言葉にならない声しか出てない。
もう崩れ落ちる寸前のその姿に、俺も平常心じゃいられなかった。
「や……っ、もっ、だめ……っ、ああっ、イく……っ!」
「イっていいですよ。……俺の声聞きながら」
そのひと押しが決定打になったのか、次の瞬間、柏木さんの身体がびくんっ、と大きく跳ねた。
「っ、あ……イくっ、あっ……ああっ!!」
何かを吐き出すような、震える叫びとともに全身が脱力して崩れ落ちていく。
「あ……柏木さんっ、俺も……イきそうです……っ」
俺自身も熱が込み上げてきて、視界がぐらぐら揺れる。
「……っ、く…っ!」
深いところで何かがはじけた。
果てた、って自覚した時にはもう息すらままならなかった。
そっとモノを引き抜いて、すぐに柏木さんの背中を優しく撫でた。
はあはあと呼吸が乱れて、肩で息をしている。
汗で濡れた髪が首筋に張りついて、顔は真っ赤。
「もっとしたくなるくらい、柏木さんが可愛かったです」
「おまえな……」
振り向いた柏木さんの目には、言葉にならないほどの羞恥と混乱がにじんでる。
「……好きです。離しません」
耳元にそう囁くと、彼はまた顔を背けて小さく頷いた。
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