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いばらの虜囚 20

 そこからゆっくりと現れてくるセキの体は、平手ではなく拳で殴られたのがはっきりとわかる指の痕を身体中に残し、それを覆うように無数の歯形に犯されて……  真っ白な体が闇の中から浮かぶに従い、目を背けたくなうような傷を負った姿が顕になっていく。  一糸も纏っていない体に、暴力の青、歯形の赤、精液の白を絡めてよろめく姿に大神は息を呑んだ。  いつもは悠々と煙草の紫煙を吐き出す唇はピクリとも動かない。 「ぇ、へ……ちゃんと、大神さんのお父さん……楽しんで、もらえましたよ?」  いまだに血が滲む口をニコリと三日月の形にすると、腫れ上がってうまく開かない目でじっと大神を見上げる。 「……そうか」  潤い、きらりと鏡のように自分を映すセキの瞳から顔を反らし、大神は「手当にいくぞ」とそっけなくだけ告げた。 「はい、ありがとうございます」  さすがに傷が痛むからか、セキはいつもなら元気に返す言葉をつぶやくように言う。  どんな時も逆境に打たれることなく力強く顔を上げて輝くような、そんな様子はかけらもなかった。  ここにあるのは乱暴に犯され、暴力を振るわれ、それでも大神のために笑おうとする健気な姿だけで…… 「おい、俺の気に入りをどこに連れていく気だ?」 「――――っ!」  踏み出そうとした足が空を切り、腹に伸ばされた手が掬い上げるように一気にセキの体を引きずり戻す。  振り上げられた足から伝い落ちていた白濁の液体が飛び散り、大神の足と廊下を汚した。  自分のスラックスの裾を汚す精液に……大神は感情を荒げるでもなく、淡々と父親の腕の中に引き戻されたセキを追いかけるように顔を上げる。  また再び、真正面から親子は互いを見つめ合った。 「治療を」 「……ああ、そうだな。じゃあお前を俺のオンナの世話役に任命しよう」 「…………」 「身綺麗にさせたら連れてこい」  「お前のオメガが具合が良くて気に入った」とニヤニヤとした笑いの下で悟は告げると、唯一そこだけ守られたネックガードを指で引っ張る。 「それから、これの鍵を持ってこい」 「今は手元にありません」 「研究所にあるんだろう? 瀬能に持ってこさせろ」 「瀬能先生はもう海外に出かけられた時間です」  は と鼻で笑う姿は心底うんざりしている様子だった。 「とうとう瀬能まで逃がしたか」 「瀬能先生のお仕事は多岐に渡ります、今回もその一環と聞いています」 「あの顔のお綺麗なアルファも逃がしたろう?」 「直江はベータです、彼には表の会社の業務を任せてあります」 「あのバケモノどもは?」 「彼らにもそれぞれに業務を振り分けてあります」  用意された答えを淡々と答えるだけの息子に辟易したのか、悟は盛大に顔を顰めながらセキの体を弄り始める。

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