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いばらの虜囚 24

 そっちの世界に明るくはなかったが、それでもセキのわずかな知識の中にも盃のことは大事なことだと刻まれている。  交わした相手を父のように子のように見立てるのだと…… 「俺の子が腹を空かせているらしい」 「はい。すぐにご飯をよそってきま……っ」  一瞬漏れそうになった声をなんとか飲み込んだセキは、空気に触れてヒヤリと冷たく感じる胸を見下ろした。  昨夜交わされた暴力と情の痕を皆の目に晒されて、セキは真っ赤な顔を伏せようとしたが、悟の低い声が耳元で何事かを囁いたため叶わずに終わる。  見開かれた双眸が瞬きを忘れて……けれど、意思とは関係なく体は悟の言葉に従ってゆっくりと乱された服を脱ぎ捨て始めた。  ざわ……と騒ぎ出す若衆は悟に睨まれて青い顔のまま俯き、セキの方を見ないようにと視線を背ける。 「さぁ、きちんと腹の減った小僧どもを満たしてやってくれ」  悟はそう言うと、セキの背中をとん と押した。  いくつもの殴打の後と条痕の残る背中を押され、よろめいたセキはそれでも真田の方へと進み…… 「飲んで  ……え、遠慮……せずに」  そう言うと両方の乳房というにはあまりにもささやかな膨らみを両掌で押し上げるようにして突き出す。 「腹が減っただろぉ? 真田」 「は……いや、はい、はいっ腹が減っていますっ」  真田の顔色も良くなかったが、悟の言っていることは理解できていた。  さっとセキの前に正座で座ると、辺りの様子を窺いながらそっとセキの胸の先端、傷がついて赤く腫れ上がったそこを口に含んだ。  大神の手入れのされている唇とは違い、荒れ放題の中年男の唇はささくれてそれだけでも痛いのに、悟がつけた傷跡の上を擦るように動かすからセキは痛みのせいで吹き出すような汗を感じた。  ちゅう ちゅう と食事の並んだ座敷机を前に、男達が顔を伏せつつも偽の授乳を覗き見るという、なんとも奇妙な空間だった。 「っ  ぅ、んっ」  傷ついた敏感な部分を繰り返しざらつく唇で扱かれて、セキは奥歯を噛み締めながらじっと耐える。  その内、調子に乗り始めたのか、真田は舌でもって吸って伸ばした乳頭をころころと弄び始め…… 「ぇっ」  大きな声を上げられないセキは大きく見開いた目で真田に止まってくれと訴えかける。  だが真田は乳首を軽く噛んでぎゅうっと引き伸ばしながら、ニヤニヤと笑い返すばかりだ。  腫れ上がった先端は特に敏感で、ざらついた舌がヤスリのように繰り返し行き来すると、直接神経を焼くような痛みがする。  ぎゅっと手足に力を入れると、昨夜剥がされた爪がズキズキと痛みを訴え始め、セキはもうどこが痛いのかわからないまま生理的な涙が溢れるのを止められなかった。  

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