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いばらの虜囚 49

 傷がつき、弛緩して緩んだ最奥に血の混じった唾を吐きかけ、濡れの悪いアナをこねるように指を突き入れる。  内部も傷が多いのか指が動かされるたびにセキの抑えきれない悲鳴が上がり、水音と混じって不協和音を奏でていく。 「その状態でも弄ってやれば濡れるとは……畜生とは業の深い生き物だな」  まるでΩは人の枠から外れていると……いや、実際にそうだと言い切っていた。 「そう思わないか? 慧」  悟はいつの間にか入り口に立ち、光を背に立ち尽くす大男を見上げた。  部屋の引き戸が低いためにわずかに首を傾げるようにして部屋を見る大神の表情はわからなかった。けれど、その逆で大神からは暗い部屋の中がよく見える。  夜具の上で押さえつけられた、死体のような肌の色をセキの上に覆い被さる父、まるで猟犬に襲われて足を砕かれた鹿のようなセキ。  悟は血に塗れた指を引き抜き、汚れた指をセキの背中に擦り付けて拭った。 「後学のために見学か?」 「……」 「それとも、そこでオメガが噛まれるのを見てマスタベーションでもするのか?」 「セキを、返してもらいに来ました」  硬質な声はそれが冗談で言ったわけでも、勢いで行ったわけでもないことを告げる。  その声を聞いて、悟は大神を爪先から天辺まで、ねっとりと舐め回すように見上げていく。 「は  ははは  取り返してどうする?」 「ぅ……お、が  」 「このオメガはいろんな精液を飲み込んで、もうゴミ箱のような臭いしかしないだろう? そんなオメガを取り返して、お前。触れるのか?」  ぴく と指先が動いただけで変化はない。  悟は逆光で影に沈んで見ることのできない表情を見ようと、目を細めた。  けれど、かろうじてわかるのは口元だけだった。 「お前がこのオメガに触れるのを避けたそうだな?」 「    いえ」  そう返すも歯切れが悪く、大神の中にその言葉で動揺する部分があるのだと教えた。 「可哀想に。縋るセキを冷たく拒絶したそうじゃないか」  大神はセキの治療をしていた時のことを思い出して眉間に皺を寄せる。  悟に受けた暴行の後も生々しく、その体から濃い自分のものではない父親のフェロモンが絡みついていて……拭っても安易に落ちないほどに染み込んだ臭いを思い出し、大神はその不快さに耐えるように唇を引き結んだ。 「なぁ? セキ。お前は泣き崩れた と、報告が来ている」  まるで息子を優しく諭すような口調で話しながら、悟はほぐれてポッカリと口を開けて閉じなくなったアナへと赤く熟れた先端を押し付ける。 「やめろ」  すでに抵抗する機能すら無くしたアナが、本人の意思を裏切ってズプズプと悟の敏感で熱い先端を飲み込む。    

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