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いばらの虜囚 50
「あ ……ゃ やっ 」
セキは這って逃げようとして、腕の痛みに悲鳴をあげてうずくまる。
けれど後ろから覆い被さる悟はセキの拒絶も苦痛も何も気にせずに、長大な自分のモノを収めることしか考えていない動きで、乱暴に腰を突き出した。
「あ゙っ!」
ごぢゅ と体の奥で音が響き、セキの突き当たりを容赦なく蹂躙された瞬間、セキの項垂れたままの性器からプシャリと液体が飛び散る。
「さぁ、しっかり入ったが……慧、つくか、つかないか、答えろ」
「ベータとオメガの番契約は相性度によります」
「そんな話は、してねぇな」
ぐい ぐい と悟が腰を動かすたびに、セキの喉の奥から濁った悲鳴のような声が漏れて……
「セキを放してください」
その言葉に悟はゲラゲラと笑い出す。
もうその様子はどちらが大人で子供なのかわからない。
「ここで返すわけがねぇだろ。やっとお前の父親に復讐できるんだ」
「 」
大神は何も言わずに冷ややかな眼差しのまま、一歩だけ前に進んだ。
「は はは! その目! そっくりだな! お前のその目っもう後がないのにそれでも見下すように……折れず……――の番だと言わんばかりの…………」
そこまで呟き、悟はハッと正気に戻った顔をして慌てて首を振る。
「くそっフェロモンのせいでぼんやりしやがる……」
「セキを返せばすべて治ります」
「うるせぇ! お前はっそこで見てろっ」
荒い息の下で悟は痛々しいほどにやつれたセキの体に向かってぐいぐいと腰を押し進め……
「俺が、セキの首を噛むのを」
血の絡んだ唾液を垂らしながら、悟の口が大きく開かれていく。
暗闇の中で兵隊のように整列して並ぶ白い墓石のようなそれが、ほっそりとした首に食い込んで……
「っ っ、 」
歯を食いしばり、涙を溢しながらも声を上げないセキを見て、悟はぼんやりとした表情のまま緩やかに首を傾げていく。
それにつれて皮膚がみちみちと音を立て、力ずくで骨から引き剥がされていった。
「こいつも声を出さねぇのか……腕も落とされ、足も落とされて……呻きもせず…………」
悟は口元から血を溢れさせていたが拭うこともせず、まるで魂が抜かれてしまったかのように呆然とした様子で何かを見ていた。
いや、記憶の中の光景を視線でなぞるように動かし、そして息子に目を留める。
「おい、なぜ止めない?」
自分に瓜二つの男は鴨居の下で立ち尽くしたまま微動だにしない。
大人になり、多少落ち着きは出ただろうが若い頃の血の気の多さを悟は覚えていた。そんな男が、硬質な目でただ二人を見下ろしている。
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