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落ち穂拾い的な 大神の言葉 5

「早く大神さんも来ないかなぁ」  旅行に連れて行ってくれる場合、別々に目的地に入ることもあったから後から来るのだろうと、セキは遠くに見える砂丘を見やる。 「お城の中もいいけど、前回は全然観光とかできなかったから行きたいかも」  大神がいるのなら城の中でもどこでもよかったけれど、二人で街を歩いてデートみたいなことをしてみたいのが本音だった。  もしかして、耐えろと言っていたのは自分が行くまで独り寝を耐えろと言うことだったのかと、セキは一人で納得して頷く。  ――――コンコン  小さなノックは静かな部屋にはことのほか大きく響く。 「はい」  ハジメはしゃべり疲れたからと部屋に戻って行ったからハジメではない。  そうなると自分の世話をしてくれているクイスマかもしれない と、セキは慌てて室内へ戻ろうとし…… 「あ、えっと……お、王さま」  ゆっくりと開いた扉から入り込んできたのはアルノリトだ。セキは面食らいながら「こんばんは」と短く返し、頭を下げるべきだったと慌ててぺこりとお辞儀する。 「堅苦しいのはいい」  いつもは指を動かすだけでシャラリと優雅な音が音が響くのに、それがしないことに気づいてセキはごくりと唾を喉へと押し込む。  爪先は宝石が縫い付けられた室内履きで覆われていて、頭を上げるにつれて随分とラフな格好をしているのに気づく。 「  …………」  昼間に来ている真っ白なトーブのようなものではなく、もっとゆったりとしたくつろぐためのローブだ。  いや、正確には……寝衣のようだった。 「ぇ と……」  確かにハジメとは親しくしてはいるがそれだけだ。  夜中に極めてプライベートな服装で訪れるような仲ではない。  こんな真夜中に、薄着で対峙するような間柄であっては、断じてない。  ――――ましてや、二人きりで! 「きちんとご挨拶もせずに失礼いたしました。この度は、陛下よりご加護とお取り計らいを賜り、身にあま   」  言葉は一歩踏み出した王の気配で霧散した。  ほんの一歩、けれどセキは慌てて踵を返してバルコニーの方へと三歩下がった。  距離をとってやっと、セキは無意識の自分の行動が失礼に当たることを思い出して頭を下げる。 「すみませんっ! あ、あの、  ハジメにいちゃ……ハジメ様もおっしゃっていました、陛下のフェロモンは私には強すぎて……」  昼間、ハジメもアルノリトにそう注意してくれていた。だから愛妻家の王はその言葉を無条件に守るのだと、セキは信じていて…… 「大神さんにも怒られるので、すみませんがっは、はな  離れて  」  言葉はアルノリトが近づいてくるに従って途切れがちになる。

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