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落ち穂拾い的な 大神の言葉 7
医者が画面に触れて何かを操作すると、「少し大きめです」と少し拙さの残る日本語で告げる。
「そっか……早く産まれてくるから、悪いことじゃないんだろ?」
些細なことでも気にかかるのか、ハジメは医者の言葉一つ一つに質問を返していく。
「大きすぎる、のは、母体に負担がかかり、ます。ですから、……お散歩を、おおく? たくさん、してください」
「お……大きすぎても、ダメなのか?」
男のΩが子供を産む場合、妊娠期間は七ヶ月と随分と短い。未熟児として産まれるためにαとΩの数が少ないのだと言われているほどだった。
「お体が……」
医師のやんわりとした言葉に、ハジメは唇を引き結んだ。
『男なのに子供を産む』のはΩの特権でありΩが虐げられる理由の一つでもあった。
それを……
「ベータの体じゃ、何が起こるか分からないもんな」
「太陽陛下のお子様です、無事、に、お生まれに、なります」
医者の口に出した言葉に、ハジメは曖昧に頷いた。
「太陽陛下って?」
「ああ、アルノリトのことだよ、宗教の関係で国王は太陽って位置付けなんだそうだ」
「ほぇー……お兄ちゃんはそう言うことも全部覚えたの?」
「覚えたっていうか……王妃教育の真っ只中だよ。とはいえ、今はちょっとお休みな」
柔らかな表情で腹を撫でるハジメに、セキは昨日のことを言い出せないままに口を閉じる。
どこかでクイスマを捕まえて大神と連絡を取らないといけない……と、そわそわと体をゆすった。
「ごめんな? 退屈してるんだったらクイスマたちに観光に連れて行ってもらうか?」
「うぅん、退屈じゃないよ」
「そう? ……ありがとう。ホント、ちょっと……不安だったから、いてくれて嬉しい」
弟たちには見せられないから と続けて、ハジメはクマの濃くなった目元に手を当てる。
献身的にクイスマたちが支えてくれていることをセキは知っていた。けれどそうじゃないんだろうと、ハジメの手を取って冷たい指先を温めるように握り込む。
少し細くなった指を握りしめて、アルノリトが昨日言った言葉を心の中で擦り潰した。
ハジメの弟たちが訪れると、セキの出番はそう多くなく……バルコニーからぼんやりと外の景色を眺めることが多くなった。
砂漠の国だから確かに暑くはあったが、からりとして湿気の少ない空気と城の中を吹き渡る風のおかげで不快さはわずかもない。
けれど、不満はあった。
「どう言うこと!」
手渡された携帯電話には発信履歴ばかりが残り、通話記録は一つも刻まれていない。
セキが最初に言っていた「忙しいから」の言い訳はもう底をついて現実を突きつけ始めていた。
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