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落ち穂拾い的な 大神の言葉 12

 セキはハジメの顔に苦痛の表情があるのだとばかり思っていた。けれど、振り返ったハジメの表情にはそう言った感情はどこにも滲んでいない。  それに押されるように、セキは肺いっぱいに異国の空気を吸い込んだ。 「オレはっ大神さんのだからっ! なんで王さまみたいなのの愛人? 側室? にならなきゃなんだよ! あんな好み外! オレはお断りだ!」  背は大神よりも小さいし、筋肉だって大神より貧弱で、上からの口調も気に入らない、顔立ちだって繊細すぎてセキの好みからは外れてる。 「お上品そうなセックスするよわよわち○ぽアルファなんてーっ眼中にないんだよーっ!」 「   ――は? はぁぁぁぁぁぁ⁉︎ セキ! ふざけんなよ! アルノリトのち○このどこがよわよわだってんだ!」 「色っ長さっ固さっ反りっ血管っ真珠っ持久力っっ! 大神さんに一度負けた王さまが、勝てるわけないでしょ!」 「お前っアルノリトの持久力をバカにすんなよっ! 体も鍛えてるからどんな体位だって自由自在なんだぞ!」 「大神さんは度胸があるから青姦! オフィス! 車! コスプレ! オモチャ! 潮吹き! 人前! なんだってやってくれるんだから! この前は壁尻で盛り上がったんだからね!」 「は?」  引き気味の問い直しに、セキは大きな声で「壁尻!」と繰り返す。 「そんなのが、……流行ってんのか?」  胡乱なものを見る目つきで見るハジメに、セキはしっかりと頷いて見せた。 「あ……しばらく帰ってなかった間に、世間って、変わるもの、だな  」  しどろもどろの返事を返す。 「シュチュエーションプレイだって(一方的にだけど)よくするんだから!」 「あ、ああ……」  セキの言葉に、ハジメは毒気が抜けたようにふらふらと蹲ってしまった。  いつもなら飛んでくるクイスマ達が現れないと言うことは、本当に人ばらいがされているんだろうと、セキは手を差し出す。 「オレさぁ、王さま、嫌いなんだよね」 「おい。一応俺の夫だぞ」 「だって、あの人じゃないから」  αではある、そして噛まれれば番になることも可能なのだろう。  けれど、それだけの相手だ と、セキは苦笑した。 「大神さんじゃないと、駄目なんだよ」  溜め息混じりに空を見上げたセキの目に蒼穹が映り込み、青い光をキラキラと纏わせる。 「だから、オレは何があっても大神さんについていくし、王さまを番になんかしたりしないよ」 「選ぶのは……オメガじゃないだろ」  蹲ったハジメの絞り出すような声がすべてを物語っていた。  何をどう言い繕ったところで、Ωは発情期の際にはαを求めて狂うのだ と。

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