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落ち穂拾い的な 大神の言葉 15
ハジメの啜り泣きとシモンの懸命に励まし続ける声を聞きながら、セキは淡い金色の髪がわずかに見える赤ん坊の頭から羊水を拭き取り……鼻や口を確認しようとするけれど、その前にずるりと肩が出た。
「えっ⁉︎」
そのあとはもうただただあっという間の出来事で……セキは自分が脱いだ服の中に赤ん坊が収まっていることに、ポカン と口を開けた。
熱いと思うほどの小さな体温と、生き物なのだと主張するような生臭い用水の臭いと……初めて見る臍の緒の生々しさに、ぶるりと震えが起きる。
食いしばった歯の間から漏れるハジメの荒い息に我に帰ると、「生まれた!」ってひっくり返しそうな声で告げた。
「そんな 」
真っ青になったシモンがどうして喜ばないのか、腕の中の赤ん坊を見下ろして狼狽えた瞬間、横から伸びた手が赤ん坊を抱き上げる。
「なん……っ、先生!」
「スコア! 確認して!」
その声に応えるように白衣の集団が駆け込んで……
「後産の処理は任せるよ」
瀬能はそう言うとジャケットを脱いでセキへとかける。
砂漠の国で、湿度は低くとも気温は高くて暑いはずだったのに、セキは自分の体が随分と冷えていたことに気づく。
肩を包む温もりに……ほっとなりそうになたけれど、慌てて首を振った。
「服! 汚しちゃいます!」
「汚していいよ、王さまに新しいの買ってもらうから。とにかくそれを隠さないと、僕が大神くんに怒られちゃうからね」
「っ!」
赤ん坊を拭いたり包んだりするものが必要だと思い、服を脱いだことを思い出してセキは小さく身をすくめた。
「まぁ、こっちを見てる人なんていないだろうけどね」
「………………先生、遅いですよ」
アルノリトに抱えられてストレッチャーに乗せられるハジメはぐったりとしてはいるが、周りの人間が焦るような態度をとっていないので問題はないのだろうと、セキは感じた。
「いや、最善は尽くしたよ? 僕、明日は絶対に筋肉痛だから」
やれやれ とソファの端に腰掛け、ハジメと共に去っていく白衣の集団を見送る瀬能は、大きく胸を動かしながらまだ呼吸が整っていないようだった。
「それに、誰かさんがこんな遠くに行くから」
「と……遠くないですよ、お城の敷地内じゃないですか。…………にいちゃん、大丈夫なんですか?」
風が吹き、セキは自分の体を濡らしているのがハジメの血と用水だと言うことに気がつく。
鉄っぽく生臭い臭いに血の気が引いたように眩暈を感じてソファへと倒れ込んだ。
「向こうの医療班は優秀だよ、それに……びっくりするほど安産だ」
はは と軽い笑いに、セキは弾かれるように飛び起きて瀬能の胸ぐらを掴んだ。
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