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落ち穂拾い的な 大神の言葉 16

「どこがっ! あんなに血が出て! 苦しんでっ! あ……あんなに、叫んで  も、もっと  早く  」  体の底から湧いてきた震えにセキは言葉を切り、瀬能の胸ぐらを掴んでいた手を保っていられずに崩れ落ちる。 「いや、安産だよ、男型オメガの出産なんて、普通は一日以上かかるからね」  そう言って瀬能は腕時計を見て、トントンと指先で文字盤を叩く。 「うん、連絡をもらってから、だとしたら新記録になっちゃうかもね」  瀬能はやっと落ち着き出した呼吸の下からそういうと、大きく溜め息を吐いた。  保育器に入った赤ん坊は驚くほど小さい。  腕の中にいた時はもう少し大きく思えたのに……と、セキは不安になりながらソワソワと体を揺するようにして前後左右から赤ん坊を眺める。 「  セキ」  名前を呼ばれて、セキは飛び上がるのをなんとかこらえて頭を下げた。  爪先に宝石のついた靴が見えて、逃げ出したいけれどそれもできずに息を詰める。 「この度は、おめでとうございます」 「我が子を取り上げてくれたこと、礼を言う」  セキは何か言おうとして、結局何も言えなかった。  結果的には無事に生まれてきたけれども、予定日よりも早く、王の立ち合いもないままにし東家なんて場所で出産することになってしまった原因は自分だと、自覚がセキを責め立てる。  自分の行動がハジメだけでなく、そこで眠る小さな命を危険にさらしたのだと……  セキはツンとした鼻の痛みを感じながら、「申し訳ございません」と言葉を紡いだ。 「面を上げるといい」  素直に顔をあげていいものか、それとも下げたままの方がいいのか……答えがわからないまま、セキはゆっくりと頭を上げた。  ハジメは綺麗な と表現するけれど、セキはアルノリトの赤い瞳がまるで魔物のようで恐ろしかった。真正面から見据えられると頭から丸呑みにされるのでは……と思えてしまう程度には、魔力を持っているように見えて…… 「小さいだろう」  宝石に彩られた指先が指す先は見なくてもわかる。  生きているのが不思議に思えるほど小さな体が管にまみれてケースの向こうで眠っている。その存在を見るように促されたけれど、セキは再び項垂れて足元を見つめた。 「も しわけ   」 「だが、随分と大きいそうだ」 「は  」 「面白いことだ。あんなに小さいのに」  見られていると言う圧迫感が和らいで、セキはほっと息を吐く。  視線の先のつま先が保育器の方を向いたのを見て、そっと頭を上げた。 「このまま産月まで待っている方が危険だったそうだ」 「そ ん……そんなのは結果論です。オレがにいちゃんを危険に晒したから  っ」    

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