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落ち穂拾い的な 大神の言葉 17

 セキは再び自分に視線が戻されたことに気づいた。  頭上から……まるで太陽のように自分自身を余すところなく見つめている存在。  先ほどまでは罪悪感で震えていた体が次第に恐怖で震え出したのに気がつき、セキはジリジリとアルノリトから距離をとった。 「君がいなければハジメを失っていただろう。いや、ハジメだけではない、我が子すらも狭い胎宮に耐えられずに死んでいた」 「生まれたばかりの赤ん坊の前でっ! そんな不吉なことを言わないでください……」  セキは、まるで言葉が意思を持って赤ん坊を傷つけるとでもいいたげに叫ぶと、はぁはぁと肩で荒く息を吐いた。 「運が良かったのは王さまとにいちゃんです! 皆の尽力があったから助かったんです!」 「それに、君の力だ」  子どもが生まれた喜びも何もかも、王を王たらしめるような声音の前には何も存在しなかった。  ただあるのは為政者として、よりこの国の未来と王族の繁栄を目指すだけの働き蜂だ。 「ハジメの命を救い、子を産ませてくれたことに感謝する」 「だからっ それはオレの力じゃ……」 「王の直系は今では私とこの子しかいない」  自分の子を見ているのに、愛しむ感情はそこにない。 「このままでは私とこの子に何かあれば直系の血が途絶えることになる」 「そんなこと、言われても……」  それはそっちで考えるべき事柄だとセキは言いたかった。  けれど、つい先ほど、出産の激痛に襲われて体力だけでなく魂まで消耗して眠っているハジメを思うと、安易なことは言えなかった。  好きなだけ産めば。  好きなだけ孕ませれば。  今までなら軽口で零せていた言葉も、今日……人ひとりをこの世に生み出す際の親の苦痛を思うと、安易に言えなくなっていた。  溢れた羊水が、滴る赤い血が。  出産と言う行為が命懸けで、決して覚悟なしに望んでいいものではないのだと…… 「 ――――君がますます欲しくなったよ」  王の言葉にセキはサッと周りを見渡した。  幸いなことに人ばらいがされていて、警備の人間ですらいない。  王が自らの口で欲したΩ。  そんなことを知られたら逃げられるはずがなかった。 「オレは大神さんのオメガです」  まるで繰り返せば言霊となって首元に歯形がつくと信じて疑わないような言葉だ。  アルノリトはその足掻きに柔らかく双眸を細め、愛しいものを見るように優しげに微笑みを浮かべてみせた。 「口に出すのは自由だ。気の済むまで言うといい」 「なに……」 「ヒートになったら呼ぶといい」  はっきりとした言葉で告げられ、セキは膝から崩れそうな衝動を抑えるのに必死だった。  

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