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落ち穂拾い的な 大神の言葉 27
「すべての人間が本音で話しているとは限りません、気づけば相手からの言葉が波風を立てないための飾りだった なんてことはよくあることです。そんなやりとりでご満足なさるなら止めはしませんが」
「老爺め」
ふふ と穏やかに笑い返す瀬能に、アルノリトはきつい視線を向けた。
爪の先がネックガードを引っ掻く。
「あっつぅい……砂漠の国、ホント無理、暑い」
いつもは我慢できる無骨なネックガードが苦しくてセキはグイグイと引っ張る。
こめかみからツ……と流れ落ちた汗が形の良い顎を伝って落ち、手の甲にパタリと落ちた。
崩れた水玉は震えてさらに落ちてシーツに染み込んで短い生涯を終え……セキはそれを踏み躙るように指先で強く擦る。
「ごめん〜シミになっちゃうかも」
「いいよ、新しいのを用意してもらえればさ」
「ん゛ー……でも、洗ってくれる人に申し訳ないし」
洗濯機の導入はあるだろうけど、それでも汚れているものを人に洗ってもらわなければならないってことにセキは座りの悪い思いをしていた。
「これからもっと汚すんだから、気にすんな」
「…………汚す?」
「……お前、自分のヒートが始まっているって分かってないのか?」
そう言ってくるカイは、同じ部屋の同じ布団の上にいて、対して動きもしていないから涼しげなままだ。
どこが換気口になっているのかはわからなかったが、ひんやりとした風が吹くたびに汗が引いていくようだった。
つまり、今、この部屋は暑くない。
セキはは と息を吐きながら緩く首を振った。
「オレの予定はまだまだ先だし」
「これだけ、王のフェロモンの濃い場所にいたらずれちまうって!」
「そん ……匂いなんてしなかったよ」
セキはセキなりに気をつけて、ことあるごとにフェロモンはしていないだろうかと気をつけていた。
なのに、濃い場所と言われて眩暈を感じてしまうほどだった。
「オレ……あれだけ注意してたのに!」
「ここはさ、王の居室だよ、すべてが王さまのフェロモンを含んでいるんだ」
城全体が縄張りだ と思うと、セキはざっと血の気が下がる思いがした。
「じゃ、じゃ、じゃあ……まずいよ! カイ! どうしようっ」
とっさに飛びつくも、カイは特に驚いた様子もなければ焦った様子もない。
ベッドから手を伸ばせば届く位置にある窪みを押し、水と消化が良くて吸収しやすい果物を持ってくるように言う。
「 あ、俺たちのゴムはMサイズでいいよな?」
そう言うとささっとコンドームの注文も終えてしまった。
「何言ってんの⁉︎」
「必要だろ?」
カイの返事は当然と言う色を含んだまま、怯みもしていなかった。
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