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落ち穂拾い的な 大神の言葉 28

「いやいや、出ていってよ!」 「は? なんでだよ」  強めに言い返すとカイは先にシャワーに行くからな と言って動き出そうとする。 「待って待って待って! オレ、これからヒートなの!」 「? だから、俺が付き添うんだろ?」 「…………」  言葉の通じなさと沸々と上がり始めた熱に揺さぶられて、セキはあーとかうーと声を漏らす。 「セキの国じゃ、オメガ同士でヒートを乗り越えないのか? 親しい奴と一緒に籠ったりするだろ?」 「なんでだよっ一人だよっ…………多分、一人……」  一瞬強気で言い返したものの、自分のこれまでの発情期間を思い出して一人で過ごしたことがないことに気づく。  常に傍にいた存在の不在を改めて感じ、セキはギュッと体を縮こめる。 「だから、オレを助けたいって思うなら外で王さまを見張っててよ!」 「無茶言うなよ」 「とにかく! オレは一人で乗り越えるもん」 「無茶ばっか言うなって」  カイの表情はセキをどうやってあやすか考えている兄の顔だ。  対してセキは今にも枕を投げつけてやると言わんばかりの態度で部屋の隅に引っ込んでしまう。 「この国ではヒートの時は助け合うのは普通のことで、セックスにカウントされない。もし……陛下が来たら俺が追い返すことはできる……けど 」  カイは曖昧に言葉を区切り、だんだんと息を荒くしていくセキを憐れむように眺めては肩を落とす。  少し遠くを見るような目は憐れみを含んで仄暗かった。 「セキが望んだから、俺は何もできないからな」  細い指先が撫でる先は首元に存在する噛み跡だ。  あの瞬間、理性が溶けて自ら男の体に縋りつき、欲しいと叫び声を上げた……忌まわしい記憶は首元の傷と一緒で何年経っても薄れる気配はなかった。  目に入るたびに後悔と性別への呪いを痛感させるそれに…… 「だから、俺が鎮める。ちょっとでも発散できたら違うから」  説明は終わったとばかりに背を向けたカイに、セキは力一杯に枕を投げつける。  空気でも入っているんじゃないかと思えるほど柔らかない枕は威力もなく、空気の抵抗に負けてぽすんと可愛らしい音を立てて足元に落ちた。  衝撃はないにも等しかったけれど、セキが何をしようとしたのか伝えるには十分だ。  流石にカイは眉を吊り上げ、大股でずんずんとセキに近寄る。 「このままだと、絶対にお前は陛下の番になる! しかも自分から望んでだ!」  怪しげな水晶もカードも使わずに告げられた未来にセキは大きく首を振って「しない!」と叫び声を上げた。  けれどその言葉がどれほど儚いのかカイはよく分かっていた。

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