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落ち穂拾い的な 大神の言葉 31
フェロモンを嗅ぎ分けるためにすんすんと鼻を鳴らしては、切なそうに下半身に手を伸ばして慰め始める。
くたりと力なく垂れ下がったモノをめちゃくちゃに扱き上げ……先端の柔らかな部分に爪を立ててどうにか達すると、ほっとしたように倒れ込んでしまう。
白さのないわずかばかりの液体が手のひらの血と滲んで、腕を投げ出す勢いで床に垂れる。
「セキ? セキ!」
カイが駆け寄っても、セキは真っ白な顔色のまま目を閉じて返事をしなかった。
カイからの連絡を受けて、瀬能が医療班を伴って部屋の中へと駆け込んでくる。
「バイタルとって!」
多種多様な国籍の人間で構成されているというのに、瀬能の一言でグループはサッと自分の役割をこなすために動き出す。
まるでずっとこのチームで死戦をくぐり抜けてきたとでも言っているようなお互いへのフォローのタイミングは、見ているだけでも感動してしまうほどに洗練されている。
「点滴で一緒に抑制剤入れて!」
「はい」
「手の怪我は縫わずに消毒だけにしようか」
「はい」
「性器周りを確認して、傷やおかしな部分はない?」
「はい」
短い間隔でやり取りされる会話は寸分の隙もなく、カイは自分にできることはないと悟ってよろよろと後ずさって部屋の隅で膝を抱えた。
「君は? 不便だろう? 少し休んでくるかい?」
セキの手当のために必死の形相をして動き回る医師たちをのんびりと眺め、瀬能はカイのそばに立ってのんびりと言う。
「もう、四日目だ。…………オメガのヒートはこんなに長引かない」
「普通はね。普通の基準を間違えてしまうと苦しむよ? 世界の基準が自分って頭の硬いことを考えていたら、そのうち右向いても左向いても気に食わなくて発狂……なんてやつになっちゃうしね」
軽い口調で言ってはいるけれど、瀬能の言葉はきっと教訓なのだろう と、カイは理解していた。
「セキくんはね、ちょっとヒートが……重めなんだ。いつも大神くん、よく付き合えてるなって思うよ」
「…………」
セキは小さくて華奢で……大神はその反対だ。
大神が自分の欲望のためにセキをいいように操って、美味しい思いをしているんだろうと思っていたカイは、過ぎた性欲と熱に炙られる体がどれほど恐ろしいかを痛感していた。
今だって、意識がないはずなのにひそまったそこがひくりと引き攣り、中に入れるものを探しているのがわかる。
腰は少しでもいいところを探ろうとしてヘコヘコと動き、意識とは別の……本能に支配された体が奇妙な動きを見せていた。
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