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落ち穂拾い的な 大神の言葉 33
やっと気絶することができたと言うのに、先ほどの言葉で気がついてしまったようだ。
焦点の合わない瞳で見回し、「お がみさ 」と声を出す。
叫び、喘ぎすぎた喉は潰れて普段の軽くハキハキとした声音はかけらも残されておらず、嗄れてまるで地獄から人を呼び込もうとしている悪霊の声のように響く。
「僕たちは退散するよ」
瀬能がそう言う前に医療班は門の向こうに待機していた。最後に残っていた瀬能が外に出て、髑髏の意匠のついた鍵で鍵をかける。
重々しく、金属の擦れ合う音が妙に甲高く響いて……
カイが呆然としている目の前で、セキは堪えきれずに自慰に耽り始める。
擦られすぎて肌のあちこちは真っ赤になって腫れ上がってしまい……快感を拾えているのか苦痛で誤魔化しているのか判断ができない状態だった。
そんな状態でも……我慢できないのだろう。
せっかく手当をされた指先が再び血に塗れて……
「いくら……理性を失うからって、生爪剥いだら普通は意識を取り戻すよ…………取り戻すはずなのに……」
終わりの見えないセキの発情期に、カイは絶望を感じて崩れ落ちた。
赤い包帯が床に落ち、王の手がセキの腕を掴む。
枯れ木のような筋ばかりの細い体はたいした重さもなく、アルノリトはまるで人形をぶら下げている居心地の悪い気分になっていた。
「なるほど、よくここまで耐えることができたものだ。君の匂いは大変甘美だ」
「や 大神 さ 」
アルノリトはセキの言葉に耳を貸さないまま、懐から細い棒を取り出す。
無骨で愛想のない、首を締め付けいつもセキを悩ませていたネックガードの鍵だった。
「説明は受けている。これと、君の指紋が必要なのだと」
「ぅ ぁ …………ぅ、あ……ぃや 」
「君の体はそうは言っていないようだが? 床に手鏡ができてしまったぞ?」
揶揄うような軽い言葉に、首を上げる気力もないセキは項垂れたままゆっくりと瞼を上げた。
その先に見えるのは、床に溜まった愛液に映る折れていない自分の姿だった。
ミイラのように痩せ果ててまで……それでも、その股間はαを欲しがろうとしていた。
「ぁ゙……ぁ゙、あ゙、あ゙っ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙」
力尽きた操り人形のようだった体が跳ね上がり、気分を捉えている王目掛けて拳を繰り出す。
細い腕は玉体に届く前にへし折られても当然だったのに、アルノリトはあえてそのままにさせた。
セキが繰り出した拳は……ポフ……と微かな音を立てて力なく落ち、アルノリトの服に触れただけだった。
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