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落ち穂拾い的な 大神の言葉 37

  「どう? そっくりでしょう?」と言ってセキの格好をしたすがるが自信満々に言っていたことを思い出し、大神は鼻で笑う。   髪の毛一本も似ていない、考えのかけらも似ていない、セキは黙って他の男に肌を許さないし、あんなに怯えたような顔はしない。   いくらボロボロでも、悲しくても、目の前をしっかりと睨みつけながら七難に頭から突っ込んで突破するような……それがセキだ。   苦境に泥を舐めても、その泥の中から美しい花を咲かす蓮のように…… 「……噛まれて怒るようじゃあ王の器じゃないだろう? 気にするな」 「えぇ」 「俺は王の首を折ろうとしが、自分の首は繋がったままだ」 「そっかぁ! じゃあいいや!」  大神の言葉に納得してしまうと、セキは先ほどまでの思い詰めていた表情を一瞬で捨て去る。 「大神さん!」 「なんだ」 「だきし   っ」  セキの言葉が途絶え、大きな腕の中へとあっという間に引き摺り込まれてしまう。  いつもの大神なら、セキが抱きつきたがっても「屋外だから」と突っぱねるのに、自ら進んでセキを抱きしめ…… 「っ!」  大きかぶさるような、噛み付くようなキスがセキに降り注ぐ。  食べられる! と思わせる口がセキの唇を覆い、ゆっくりと啄むように動かされていく。  感触を堪能し、甘みを確認し……味わうようでいて慈しむような動きに、セキはすぐに嬉しそうな表情になって目を閉じる。  体の中から響いてくる水音とこれでもかというほど早い鼓動、鼓膜を狂わせそうな砂漠の風と……  目を閉じた世界にあるのはそれだけだった。  唇の飛び上がりそうなほどの熱さが、まるで暗闇にさす一条の明かりのようで…… 「  ぅっ」  セキは気がつけば小さく声を漏らしていた。それが呼水となり、先程とは違う、熱い涙が溢れ始める。 「っ……オレ…………こわ、怖かった、です」 「ああ、すまなかった」 「ホントにホントにホントに怖かったんですよ⁉︎ 狭くて暗いところもダメ出し! ホームシック……じゃなくて、大神さんシックになったし、王さまは意地悪言うし!」  隙も与えずにセキから出てくる言葉に怒りもせず、大神は辛抱強く頷いて返す。 「それだけ、離していて悪かったな」  微かに上がった口角が見えた と思った瞬間、セキは再び大神に抱きしめられて砂の上に転がっていた。  またゆっくりと体が砂に運ばれていくのを感じながら、苦しいくらいに自分を抱きしめている大神の背中に手を伸ばす。   「………………よかった」  ほんのわずかに上擦った声は普段の落ち着き払った声とは違って……セキはそれが、大神が心から搾り出すことのできた一言だとわかった。

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