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落ち穂拾い的な 瀬能の居場所
瀬能は優雅に紅茶に砂糖を入れてスプーンで混ぜる。
「僕は頑張っただろう?」
「そうですか?」
「本当は報酬に禁書庫の鍵をねだろうと思ってたのに、それをグッと堪えて隔離部屋の鍵をもらったんだ、偉いと思わないかい?」
「ああ、頑張りましたね」
「あそこに入れておいたら安全だろうと」
「そうですか」
「君との約束だったからね」
「ええ」
「もちろん、君が向こうで何をしていたのかは話していないよ、セキくんが連絡をとってしまったらすべて意味がなくなってしまうからね」
「ええ」
「条件のある中、最大限に努力したんだよ?」
「そのようですね」
「なのに難癖をつけられて、部屋の鍵を取り上げられてしまったんだ。ひどいだろう?」
「はぁ……まぁ。それで?」
瀬能は二人の間にある鋼鉄の棒を突きながら苦笑した。
「牢から出すように口添えしてくれないか?」
「罪状は?」
「ちょっと禁書庫の鍵をヘアピンで開けただけだよ」
「建造物侵入罪ですね。国だと三年以下の懲役です」
「そんな深刻なもんじゃないだろ? なのに、あれやこれや罪状を増やして閉じ込めるんだ」
「何をしました?」
「別に手を見て吹き出したりなんかしてないよ? ちょっと生ぬるい表情をしただけさ」
「王族侮辱罪ですね。こちらも三年以下の懲役です」
「だから口添えしてよ」
「余罪は?」
「……」
ため息を吐くと大神は背を向ける。
「その掘りかけの床に気づかれないといいですね」
そう言うと大神は地下から出て行ってしまった。
瀬能は苦いものを食べたように顔を歪め、ティーセットのスプーンを取り上げる。
「仕方ない、もうひと頑張りするか」
END.
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