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君に捧げる千の花束 6

 喜蝶はほっとした表情を作り、佑都の手のひらをくすぐるように触れて自分の方へと引き寄せる。  腕の中にすっぽり入るサイズ感は薫と同じだと、わずかでも共通点を探して感情を込めようと努めて……  必死に取り繕った愛しいものを見る目で佑都をじっと見て、優しくこめかみに唇を落とす。 「わっ……そ、そんなこと……」 「だめ? しちゃいけなかった?」 「ぅ……」 「佑都が愛おしいなって思ったから、したんだけど……」  落ち込む顔を見せて肩を落とせば、佑都はかろうじて建てていた心の壁を取り払わざるを得なくなった。  どんな人ごみに紛れていたって見つけ出せそうなほどの美貌を持つ男が、自分を真摯に見つめて愛おしいと言葉に出す。  もし、万が一、それが口先だけだとしても、それでもいいと思わせるほど、目の前の男の美しい顔は魅力的だった。  もちろん……と、佑都は先ほどまで自分を情熱的に抱きしめて話さなかった体に目を遣る。  長くたくましい腕は自分を確かに求めていた と、佑都はじわりと湧き上がってきた優越感に押されるようにして笑う。  特別不細工と言うわけではなかったけれど、αやΩの多い都市に住んでいたこともあって目は肥えていた。故に自分の顔面偏差値も客観的に見ていたけれど……  そんな自分に、こんなかっこいい人が愛を囁いてくれるなんて! と、佑都は見つめられるたびに跳ね上がる胸を抑えて、気だるげにしている喜蝶に「今日は泊まって行っていいよ」と提案をした。  こんなにかっこいい恋人を、囲い込んでおきたい と強く思ったからだった。  喜蝶はうんざりした気分になりながら、ベランダで紫煙を吐き出して空を見上げる。  それはこの年になって見上げてみても、高校生の時に見た星空となんら変わらなかった。 「変わったのは……」  薫に会えなくなったこと……と、友人に連絡できなくなったこと。  親は元々連絡なんて取れなかった。運命同士、二人の世界に入り込んでしまっていた両親は、例え間に入るものが自分たちの子供でも許さなかった。  三人家族の中から弾き出された子供は、自分に手を差し伸べてくれる隣の子供に依存して……  喜蝶は薫のことを心から愛していた。  けれどそれと同時に恐れの対象でもあった。  薫はβで、喜蝶はαだと言う歪な関係。  例え心を通じ合わせても、運命の番の空気を知っている喜蝶は素直に彼に愛を囁けなかった。  愛し合った結果生まれた自分達の子供すら邪魔者だと言い、二人の世界から締め出したそれを見ていたから……もし、薫と愛し合っている途中に自分に運命が現れて、そして薫を裏切ったら?    

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