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君に捧げる千の花束 13

「知ってるよ! 喜蝶は背が高くて、顔がカッコよくて、タバコ吸って   」 「バカね、そう言うんじゃダメよ。喜蝶くんはちょっと特別なことをしてもらうの、大好きよね?」  朝食に自分だけベーコンを入れてもらっていた。  梨香子の言う特別なことはそれだったが、詳しく聞かせてもらえない佑都はサッと顔を赤らめて視線を逸らしてしまう。  喜蝶は、自分の方がよく知っていると言い出した二人を冷めた目で見ながら、タバコを咥えて火をつけようとし――――けれど、火が近づこうとした瞬間、喜蝶の口元からタバコが消え失せてしまった。 「  ――――――じゃあ、貴方たちはこの子が未成年って知ってる?」  割り込んできた声はしっとりと落ち着いた大人の女のものだ。  喜蝶はその声を聞いて、記憶を掘り返す必要のなさに頭を覆いたくなった。  怒鳴りあっていた二人とは明らかに違う妙齢の婦人だ。  その女性が真っ直ぐに、今にも掴み合いをしそうな二人に向かって言った言葉に、辺りはしん と静まり返った。  怒鳴りあっていた二人も冷水をかけられたような顔になり、どちらともなく距離をとって気まずそうにしている。 「喜蝶くん、お久しぶりね」  二人は、女のでまかせだと期待したようだったが、「おばさん……お久しぶりです」と喜蝶が返事をしたことでますます青くなった。  女は掴んだままになっていたタバコの皺を伸ばし、「まだ早いってわかってる?」と詰問口調で喜蝶に尋ねた。  二人の前で……喜蝶は項垂れて、今までのように美しい顔を見せることもなく、ポツポツと「どうしてここに?」「よくわかったね」と話を始めている。 「…………」 「…………」  もし、女が言った言葉が事実だったら と、敵対していた二人の視線が一瞬で絡まった。  未成年者と関係を持ってしまった? と視線だけで会話をし、二人ともそれなりに常識人だったために、そのことを理解すると大慌てでその場から立ち去っていく。 「喜蝶くんっ私、病院に行ってくるね! それじゃ」 「僕は、そう言えば別れたんだったよね! さよなら」  喜蝶はそそくさと去っていく二人を見て、出会いが違えば気の合う友人になれたんじゃないだろうかと、解離したような心の部分で思っていた。  有無を言わさずに連れてこられたのはどこにでもありそうなカフェだ。  取り立てて客が多いという訳でもないし、ネットに写真をあげると皆が喜びそうな精緻の極みのようなケーキが出てくる訳でもない。 「コーヒーを」 「同じものをください」  項垂れながら言う喜蝶の声を聞いて、目の前の女は注文をとりにきた女性の手元を遮る。

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